大統領vs特別検察

朴槿恵大統領は職務停止となっている現在も大統領府である青瓦台で起居している。そこで一部の秘書陣と定期的に会って報告を受けると同時に、世論・裁判所への対応を指示しているとされる。これは本来なら許される行為ではないが、今も朴大統領が青瓦台を掌握しているという見方が支配的だ。

その証拠が、特別検察による強制捜査を拒否したことだ。2月3日、朴英洙(パク・ヨンス)特別検察官率いる特別検察チームは強制捜査を行おうと青瓦台を訪問したが、青瓦台側は国家セキュリティ上の問題を理由に拒否。5時間におよぶ対峙が続くも、検察側は青瓦台内部に入ることはできなかった。表向きは青瓦台の責任者である警護室長と秘書室長が拒否したことになっているが、大統領の強い意向が働いたとされる。

そこで特別検察側は、国政の最高責任者である黄教安(ファン・ギョアン)大統領代行兼国務総理に正式に捜査への協力を申し出た。だが黄総理側のスポークスマンは会見の席で「(警護室長と秘書室長)二人は法にのっとり拒否したもの」と青瓦台の対応を評価し、黄総理は協力に応じないと明らかにした。

朴槿恵と黄教安
右側が黄教安大統領代行。写真は2015年6月の国務総理任命式のもの。青瓦台HPより引用。

また、2月9日に青瓦台で予定されていた特別検察と朴大統領の対面調査も「特別検察側が事前に日程を漏らした」という理由から拒否した。日刊紙・東亜日報によると一連の疑惑が報じられ被疑者となって以降、朴大統領が検察との対面調査を拒否したのは4度目だ。だが、特別検察側はそのような事実はないと否定し「大統領側が対面調査をうやむやにするため、逆にメディアに情報を漏らしたもの」と見て対立を強めている。

さらに、特別検察側は2月6日の定例記者会見の席で「現在の捜査の進行状況を見るに、14にわたる捜査課題をすべて行うには時間が足りない」と語り、今月28日に予定されている捜査終了日の延長を考慮する立場を明かした。30日の延長が一度だけでき、申請は25日から可能だが、決定権を持つ黄代行側は「その時になってみないと分からない」とお茶を濁している。

黄教安代行
今年2月、多文化家族支援センターを訪ねる黄大統領代行。世論調査では保守候補1位の10%超の支持率を記録しており、出馬を求める声も。写真は国務総理室HPより引用。
捜査期間延長が焦点

なお、特別検察の捜査期間延長は、ややこしいが非常に重要な問題といえる。

まず、延長が認められない場合には先述のように2月28日で特別検察の捜査が終了となる。この時までに憲法裁判所の「認容」判決が出ないことは既定事実といってよい。このため、朴大統領は職務停止中とはいえ、大統領職にとどまることになり不訴追特権が維持される。よって、特別検察は朴大統領を起訴することなく、それまでの捜査内容を通常の検察に引き継ぐことになる。

通常の検察が捜査を引き継ぐと、捜査を一から見直すことにもなり、捜査期間がさらに延びる。憲法裁判所は捜査内容を判決の参考資料にするため、憲法裁判所の審理が長引くことにもつながる。結果として、弾劾裁判の判決自体が3月中旬よりも大きく遅れることになるだろう。

一方、特別検察の捜査期間が30日延長となり3月30日までとなると、現在の大方の見立てである「3月中旬の認容判決」が途中に挟まることになる。この場合、朴大統領は罷免され不訴追特権を失う。よって特別検察は捜査期間が終了する3月30日以前に朴「元」大統領を起訴することが可能になる。このスケジュールこそが、現在の国政の混乱を最小限に抑える理想的なシナリオと見られている。

これが実現するかどうかは、ひとえに黄大統領代行の決断にかかっている。




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