朴大統領側の総動員戦術

このように決して自身の非を認めない朴大統領側が、並行して「世論戦」に力を入れているというのが韓国メディアのもっぱら見方だ。「朴槿恵を愛する会(通称:パクサモ)」や「オボイ連合」、「海兵隊戦友会」といった保守団体は、ソウル駅前を中心に週末ごとに「反ろうそく・反弾劾」デモを行っている。

参加者も増えている。主催者側によると直近の2月4日に行われた集会では、130万人が参加したという。水増しされた数字と一般に見なされているが、集会自体の存在感が増しているのは事実だ。4日にはセヌリ党の次期大統領選候補として名を挙げている李仁済(イ・インジェ)前議員や、金文洙(キム・ムンス)元京畿道知事など知名度の高い重量級の政治家が参席したことで、メディアでも大きく取り上げられている。

金文洙写真
2月8日、大邱市内で行われた弾劾反対の集会に参加する金文洙元京畿道知事(韓国国旗を付けた人物)。以前は韓国有数の労働運動家として鳴らしたが、振れ幅の大きい政治家だ。写真は同氏のフェイスブックより引用。

さらに、セヌリ党の現役議員も参加しマイクを握り、当初「官製デモ」として半ば色物扱いされてきた集会の体裁が、親朴槿恵派の決起集会の様相を呈している。ただ、ケーブルテレビ局のJTBCは1月26日の報道で「お風呂に入ってくれば5万ウォン(いかにも日当目当ての参加者と映らないための配慮とされる)、ベビーカーを引いて子連れでくれば15万ウォン」といった「価格表の存在」を報じ「作られた集会」との見方を示した。

次いで1月30日には、朴槿恵政権下の2014年から16年にかけ青瓦台指示のもと、全経連(日本の経団連に相当)が財閥企業から集めたお金を上記団体をはじめとする保守系市民団体に配ることで、官製デモが行われてきた事実が特別検察の捜査で明らかになった。金額は70億ウォン(約7億円)にのぼるとされ、かねてからの「黒い噂」が真実であったことが分かり、韓国社会に衝撃を与えている。

朴槿恵支持デモ
朴槿恵大統領を支持し、弾劾に反対する市民たち。シンボルは太極旗と呼ばれる韓国国旗だ。手に持ったプラカードには「戒厳令を宣布せよ」とある。1月撮影。

また、昨今世界中で話題の「フェイクニュース」も登場した。JTBCは7日のニュースで、昨年10月24日に同社が公開し「崔順実ゲート」解明のきっかけとなった「タブレットPCが『ニセモノ』」で、「トランプ大統領が弾劾に反対した」などといった嘘のニュースがSNSを通じ急速に拡散していると警鐘を鳴らした。インターネット上だけでなく、新聞のかたちで300万部が印刷され旧正月の連休時に大量にポスティングされるなど、組織的な動きがあると報じている。300万部を印刷するのに2億円(約2000万円)がかかるとし、資金の出どころについても疑問を呈した。なお、日本でもこうした偽のニュースを引用した報道が散見されるが、今の韓国情勢を見誤る可能性があるのでご注意願いたい。




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