市民の憂慮が現実に

ソウル市内の中心部と全国主要都市で14週にわたって行われている「ろうそくデモ」でも同様の声は上がっていた。やはり直近の2月4日の集会では「今は市場でトッポッキを食べている場合ではない」という演説が喝采を浴びた。これは大統領選候補たちが市場を訪ね、屋台で人気の軽食を食べ、庶民であることをアピールする恒例の「政治ショー」を皮肉ったものだ。「捕らぬ狸の皮算用」といったところだろう。

零下10度に迫る真冬の寒さの中「ろうそくの灯を一時たりとも絶やしてはならない(参加者の40代女性)」と冷たいアスファルトに座り続ける市民にとって、まるで天下を取ったかのような野党有力政治家たちの行動は受け入れられていない。

2月4日ろうそくデモ
2月4日のろうそくデモ。主催者発表35万人が集まった。

じっさい、昨年12月9日に弾劾案が可決されてからは、政治家の姿を見かけることはめっきりと減っている。比較的多く見かける李在明候補は、前述した8日の記者会見で「政治家は油断して広場を去ってしまった」と指摘している。

この路上の声が野党政治家の耳に届いたのか、野党三党はそれぞれ、2月11日の15度目のろうそくデモに党として動員をかけることを言明した。

デモを主催してきた「朴槿恵政権退陣・非常国民運動(退陣運動)」も現在の状況を危機感を持って眺めている。10日には憲法裁判所前で記者会見を開き「憲法裁判所は犯罪者の悪だくみを一切ゆるしてはならない。迅速かつ断固として弾劾を認容せよ」と強調した。さらに、久しぶりに「100万人」という目標動員人数を掲げ、市民の参加を呼び掛けた。

憲法裁判所前
憲法裁判所前で、弾劾裁判の早期判決を求める「朴槿恵政権退陣・非常国民運動(退陣運動)」の人々。昨年12月23日撮影。

2月11日は旧暦では1月15日となり、小正月にあたる。この日は満月のもと、両陣営は総動員で路上で激しく主張を行うと見られる。すっかり選挙モードとなっていた韓国の政局も、ひとまず弾劾政局に戻りつつあると見てよいだろう。

今の韓国政治はかつてない混乱の中にあり、ほんの数時間で状況が変わることもざらである。腕の見せ所とはりきっているように見える政治家もいる。市民たちにとっては、落ち着かない日々が続く。最悪の景気のなか、生計に追われ、日々移り変わるニュースをすべて追える市民もごく少数だろう。結果として単純な思考に流されてしまう可能性もある。

今は、韓国の今後をうらなう上で、非常に大事な局面にある。こうした状況が長引くべきではないとの思いを筆者も共にしている。