11月5日、韓国の首都・ソウル市の中心部、光化門広場一帯で10万人を超える大勢の市民が集まり声を上げた。昼過ぎから始まったデモ(集会)は、午後8時ころピークを迎え、光化門から市庁前広場に至る1キロ弱の歩道を老若男女が埋め尽くした。デモは平和的に行われ、参加者の表情は明るかった。先週に続き行われた大規模なデモがどこに向かっているのか、取材結果をもとに整理した。(ソウル=徐台教)

朴槿恵OUTを掲げる参加者たち
朴槿恵OUTを掲げる参加者たち

白氏の告別式に野党オールスターが勢ぞろい

この日の集会は、午後2時から故・白南基(ペク・ナムギ)氏の永訣式(告別式)、同4時からは朴槿恵大統領の退陣を要求する「ろうそくデモ」という二部構成で行われた。

故・白南基氏は、昨年11月の大規模なデモ「民衆総蹶起(決起)」に参加した際、警察の放水による脳挫傷が原因で意識不明となり、闘病のすえ今年9月に命を引き取った全羅南道出身の農民だ。政府はかたくなに責任を否定し、真相究明のための司法解剖を要求、死因は明らかだとする遺族とのあいだで争いが続いていたが、政府側が折れたことで、この日の永訣式となった。

式には野党三党(民主党、国民の党、正義党)の党首ならびに、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長が参加。来年の大統領選の有力候補とされる、文在寅(ムン・ジェイン)元民主党代表、安哲秀(アン・チョルス)国民の党元代表も参席するなど「野党オールスターズ」が結集した。

筆者はこの集会を取材していないので、韓国の聯合ニュースを引用する(翻訳は筆者、記事リンク)。

集まったのは白南基農民の永訣式のためだったが、事実上『崔順実ゲート』とう政局の中で、市民の輪の中に(有力政治家が)入り、朴槿恵大統領の一線からの交代を圧迫する様相を呈した。

盛り上がる路上の民主主義

次に行われたのが「朴槿恵退陣」を求める大規模なデモだった。永訣式に参加した人々のほとんどが続けて参加したこの集会もまた、二部構成で行われた。一部は「広場で怒りを表す」、二部を「路上の民主主義を実現する」とし、合間に街頭行進をはさみ、暗くなった午後9時まで続いた。

「朴槿恵退陣」を掲げるデモ参加者
「朴槿恵退陣」を掲げるデモ参加者

このデモには主催者発表20万人、警察発表4万5千人という多くの市民が詰めかけた。どの国でもそうだが、主催者と政府側の参加者数は常に食い違う。ただ、主催者発表よりも多いことはなく、警察発表より少ないこともない。この日の瞬間最大風速は10万人を超えていたことは確実だ。先週のソウルのデモが、主催者発表3万人、警察発表1万2千人だっとことを考えると5倍以上の動員となる。

また、釜山(プサン)や光州(クァンジュ)、世宗(セジョン)市など全国の主要都市でも同時多発的に市民が集まり、全国的に30万の動員があったと主催者側は発表した。人口の0.6%、日本でいうと80万人が集まった算段だ。

すでに様々なメディアやSNSでソウル市内の様子がシェアされているので、いちいちそれを繰り返すことはしない。写真数枚を見ていただければこの日の熱気が伝わるだろう。前半部の写真や映像が無いのは、筆者がその場にいなかったからである。

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人、人、人…青字は「下野しろ朴槿恵」
人、人、人…青字は「下野しろ朴槿恵」

サプライズでスター知識人登場

ちなみに、この日一番の盛り上がりを見せた(と言われている)のが、思想家の金容沃(キム・ヨンオク)氏(68)によるサプライズ演説だった。登場と同時に「おおーっ」というどよめきが沸き上がり、すぐに金氏独特の力強い口調で演説が始まった。

大学教授を務めていた1986年4月当時、全斗煥(チョン・ドゥファン)独裁政権による民主化運動弾圧を批判する「良心宣言」を発表し職を辞して以降、30年にわたり民心に寄り添う卓越した知識人として親しまれてきた金氏の演説に人々は聞き入り、時に歓声を、時に拍手を送っていた。

演説する金容沃氏。写真はハンギョレ新聞サイトより
演説する金容沃氏。写真はハンギョレ新聞サイトより

筆者は演説時に後半部で紹介する市民団体関係者へのインタビューを行っていたため、演説の要旨はハンギョレ新聞を引用する(翻訳は筆者。記事リンク

「この場に座っている皆さんは、ただ政権退陣のために座っているのではない。私たちが行おうとしているのは、新たな生、学問、哲学、意識、文化…新たな生を望むにあたり、古びた生を長引かせようとしている邪悪な一団があちこちにあふれている。これを処理することは、政治家が弾劾してできることではなく、ただわれわれ国民の意識運動により、民衆の行進によってあらゆる集団を一掃しなければならない」
「昔は独裁打倒のための集会だったが、今日は違う。確実に10万人以上の群衆が集まったが、より多くの人々が自由に自身の意思を表しながら、朴槿恵が皆さんの前にひざをつくように、絶え間なく行進を続けなければならない」

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