注目の的であった二度目の民主党予備選挙で文在寅氏が勝利し、党内の大勢を決めた。安哲秀氏にも世論調査で追い風が吹く一方、保守陣営は足並みの乱れが目立つ。(ソウル=徐台教)
共に民主党予備選で文在寅氏が連勝 過半数には届かず
29日、大田(テジョン)市で「共に民主党」忠清地域の予備選挙が行われ、文在寅(ムン・ジェイン、64)候補が47.8%の得票で1位となった。
2位は36.7%で安熙正(アン・ヒジョン、51)候補、3位には15.3%の票を集めた李在明(イ・ジェミョン、52)候補が続いた。

文氏は27日に光州市内で行われた緒戦に続き二連勝となった。安候補は過去7年間知事を務めてきた忠清南道を含む投票ということで逆転が注目されたが、一歩及ばなかった。
共に民主党の予備選は4度の投票を経て候補を決めるシステム。2度目となるこの日の結果までを合計すると、文候補は55.9%となり過半数を占める。

残る予備選が行われる嶺南地域(31日)には文候補の地盤となる釜山市があり、首都圏(3日)でも文氏の人気は安定している。このため、過半数得票者が出ない場合の決選投票にもつれこむことなく、3日に文在寅氏が共に民主党候補となる可能性が高い。
文氏は結果発表直後、報道陣の取材に対し「政権交代は一人でできるものではない。他の候補と力を合わせて必ず政権交代を成し遂げる」と余裕を見せた。民主党内部での決着が付いた、というニュアンスが多分に含まれるものだ。
しかし、敗れた二人は闘争心を燃やし続けている。

安熙正候補は自身のフェイスブックに「積弊の清算と(文、李両候補が)言うが、どうやって清算するというのか。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権以降、悪事を働いた者はみな逮捕されているし、失政は選挙で審判を受けているではないか。新しい韓国を開くという候補たちが相手に対する憎しみと怒りを煽って票を求めている。これでは新しい韓国を作ることはできない」と、自身の「大連立構想」への支持を求め「与野党合意に基づく新たな歴史を作る」と逆転を訴えた。
一方の李在明候補は30日午前、国会で記者会見を開き「自由韓国党と正しい政党の保守連合勢力に立ち向かうには、野党連合政府が大切。しかし既得権層を抱える文在寅候補も、大連立を説く安熙正候補も適任者ではない。明日から全体の選挙人の56.5%におよぶ地域でのARS(電話)投票が始まる。嶺南地域で2位になり、首都圏で文在寅候補の過半数を阻み、決選投票で勝利する」と勝利へのプロセスを支持者に呼びかけた。
自由韓国党は候補者間で激しい応酬 党内は「親朴」を清算できず
旧与党で現在は共に民主党に次ぐ93議席を持つ自由韓国党(旧・セヌリ党)の予備選挙も31日の候補者選出に向け大詰めを迎えている。
責任党員の投票は26日に完了しており、29日、30日の両日に行われる全国世論調査の結果を50対50の割合で加えて、31日に大統領選候補者が決定する。
4名の立候補者のうち、洪準杓(ホン・ジュンピョ、62)現慶尚南道知事と、金鎭台(キム・ジンテ、52)議員の一騎打ちとなっている。各種世論調査で全大統領候補のうち、10%超の支持率を得ている洪候補が勝利するという見方が支配的だ。

だが、党内には内紛の気流が渦巻いている。洪準杓候補は収賄で、金鎭台候補は公職選挙法違反でそれぞれ裁判中の身であるが「候補者になった後に有罪が確定したらどうするのか」と事あるごとに互いを強く批判している。
ケーブルテレビ「JTBC」が29日報じたところによると、28日午前にあったラジオ討論会で金候補が洪候補に対し「あのね、あなたは経験や年齢が上だから候補になろうというのですか?」と質問を投げかけた。これに洪候補が「年齢が上だから出てきた」と反論、さらに金候補が「自制が必要だ」と受け答えるなどし、ついには司会者が2人のマイクを切る事態が起きたというのだ。
背景には、洪候補がこれまで朴槿恵前大統領に対し「弾劾されて当然」と強い批判を繰り返してきた点がある。これを良く思わない、金鎭台候補を含む強硬な親朴槿恵系議員とのあいだで意見の衝突が目立つ。
さらに、29日には金候補を含む同党の議員80人が、裁判所に嘆願書を提出する出来事があった。30日の朴槿恵大統領の逮捕令状審査を控え、在宅起訴にするよう善処を求めるものだが「朴前大統領と崔順実氏による国政ろう断を止められなかった与党議員としての自覚と反省が見られない」と、世論の強い非難を浴びている。
一方で29日午前、昨年12月29日以降、党を率いてきた印明鎭(イン・ミョンジン) 非常対策委員長が「3月31日で辞任する。大統領選候補者が党を率いるのが筋」という意向を明らかにしている。

正しい政党の劉承旼(ユ・スンミン、59)候補も「自由韓国党は親朴系から逃れられず、憲法裁判所の決定にも従わないなど、過失を認めていない」と同党への批判を強めている。
保守本流を自認し、単一化も視野に入れる主張を行ってきた洪氏は今後、困難なかじ取りを迫られることになり、党内の内紛は当分続くものと見られる。
吹くか「安風」、安哲秀氏が世論調査で2位に躍進
25日、26日、28日と予備選投票で三連勝を収め、本選行きが確実視されている国民の党の安哲秀(アン・チョルス、55)元代表。同氏の支持率が全国で高まっていることが、世論調査の結果、続々と明らかになっている。
30日、「REALMETER社」が発表した世論調査の結果、先週の結果から4.8%上昇した17.4%となり、安哲秀氏は初めて全体の支持率で2位に浮上した。

1位の文在寅氏は35.2%と、依然としてダブルスコアの差があるものの、26日の湖南予備選挙に大勝し、安氏と国民の党が繰り返してきた「文在寅対安哲秀の一騎打ち」というシナリオに世論が反応を示していることが分かる。
同社はさらに、主要5党の候補者が出揃ったと仮定した場合の支持率調査結果も発表している。ここでも安氏は21%で2位につけており、「文在寅の相手」というイメージを強めている。

また、別の世論調査機関である「R&Search社」が29日発表した結果でも、安氏は先週に比べ5.4%上昇した16.6%で2位につけている。

こうした結果は様々なメディア、SNSで幅広く共有され、安氏の躍進を韓国市民に印象付ける結果となっている。世論調査の正確さに疑問を呈する声は韓国でも少なくない。だが、今回の大統領選のように選挙運動は短期間に限られる場合、その影響力は無視できないものと見られる。