記者懇談会での一問一答 「国民の党との単一化は難しい」

政党大会後、洪候補は取材陣を集め一問一答を行った。筆者は席を外していたので、この部分で日刊紙「京郷新聞」の記事を引用したい。

問:親朴槿恵派に対する人的清算を要求する声がある
洪候補:系派はこれ以上存在しない。5月9日までは私が大将だ。大統領の弾劾とともに親朴議員も弾劾された。大統合が必要な時点で、人的清算は良くない。

問:正しい政党との連帯や候補単一化はあるか
洪候補:分党の原因は弾劾であったが、弾劾はもう終わった。大統領も逮捕された。名分はもう無い。「大きい家(実家)」に返ってくるのが道理だ。戻る条件を付けるのは正しくない。

問:国民の党との連帯や候補単一化はあるか
洪候補:国民の党との単一化は難しくなる。候補単一化は過去のDJP連合(1997年に金大中氏と金鐘泌氏のあいだで結ばれた連合。金大中氏はこれをテコに同年の第15代大統領選挙に当選し、国務総理には金鐘泌氏が就任した)のように政治的な取引として行われなければならない。世論調査の結果だけで候補統一化をするのは適切ではない。当面は4強体制で行くと見る。左派候補2人、中途半端な左派候補1人、保守候補1人だ。

問:今回の大統領選では進歩派の候補が多い
洪候補:今は右派が恥ずかしいと思っているはずだ。代表選手を選んだのに、(朴前大統領が)あんな失策をしたからだ。「シャイな保守」でもない「シェイム(恥じる)保守」だ。しかし十分やれるという自信がつけば出てくるはずだ。4強体制が決して不利ではない。

問:朴槿恵前大統領との関係は
洪候補:朴前大統領はわが党の党員だ。起訴されたら党紀に則り処置する。

問:引き揚げられたセウォル号のある木浦新港に行く計画はあるか
洪候補:仕事には前後があるため、さしあたっては別の所に行かなければならない。仕事が落ち着いたら考えてみる。

問:セウォル号が引き揚げられて真相究明を始めなければならないという声がある
洪候補:セウォル号事件は捜査をした。裁判もした。補償もした。その後に特別調査委員会でまた調査をした。何が残っているのか教えてくれたら、それに答える。

問:党の選挙対策委員会をどう構成するのか
洪候補: 印明鎭(イン・ミョンジン) 非常対策委員長の助けを借りなければならない。党内外の共同選対委員長体制になる。さらに地域の選対を強化する。今は時間がないので、「現場」が何より重要だ。

問:改憲に対する考えは
洪候補:大統領選前の改憲は不可能だ。当選後に国民の意向を聞かなければならない。最も大事なのは権力構造であるが、分権性にするのか、4年重任制にするのか、国民の意思を聞く必要がある。また、仕事をせずにケンカばかりする国会で改憲ができるのかも疑問だ。上下両院制や基本権を含め検討がいる。改憲には賛成だ。



他党の反応は冷淡 痛烈な批判相次ぐ

有力候補となり得る洪準杓氏の候補決定を受けて、各党も論評を発表した。

共に民主党は「洪準杓候補、完走か中途下車か」というタイトルの論評で「大統領候補になったからにはすぐに知事職を辞退せよ。道民と国民に対し礼を逸する行為だ」と厳しく迫った。

これは洪候補の「4月9日の夜に慶尚南道知事職を辞する」という過去の発言を受けてのものだ。この通りに辞任し、権限代行となる副知事が辞任届を翌日10日に提出する場合、慶尚南道は12日に予定されている全国補欠選挙の対象にならず、洪候補の腹心である副知事が道政を受け継ぐことになる。

洪候補側は、「補欠選挙にかかる300億ウォン(約30億円)の費用と、それに伴う人的な費用などが無駄であるし、これまでの道政がひっくり返り慶尚南道が以前のようなひどい状態になる」と主張しているが、これは選挙の公正性を著しく毀損するものだと、野党側は強く批判している。正義党は告発の構えも見せている。

共に民主党の論評はさらに「すぐに知事職を辞退しないのは、大統領選を途中でやめる目論見があるのではないか。大統領になりたいのか、知事をやりたいのかはっきり決めろ!」と強い調子で迫っている。

また、同党の大統領候補になることが有力視されている文在寅候補側は、お祝いのメッセージを送りつつも「洪候補は不正腐敗を無くし、新しい韓国を作ろうとする『ろうそく市民』の崇高な志を、野党主導の民衆革命と決めつけ現政局を無政府状態と規定した。これは多数の国民の熱望を貶めるレッテル貼りの陣営論に他ならない」と強く批判した。

ろうそくデモ写真
朴槿恵大統領罷免の瞬間。3月10日午前、李貞美(イ・ジョンミ)憲法裁判長代行が「被請求人である大統領朴槿恵を罷免する」という主文を読み上げた瞬間、市民の喜びが爆発した。3月10日撮影。

一方、同じ保守系の正しい政党の大統領候補の劉承旼(ユ・スンミン)議員の選対本部では31日、「今日、洪準杓知事が自由韓国党の候補に選ばれる過程で、暴言だけが唯一の能力であることを如実に示した」とし「朴槿恵逮捕で『正しい政党』の名分は無くなったとしたが、逆に名分がより明確になったと見るべき。自由韓国党こそ存続する名分が無くなったのでは」と反論した。

続けて「『大きな家(実家)に帰ってこい』としたが、『大きな家(刑務所を指す)』に行くかもしれない人が何を言うのか」と痛烈に非難した。そして「自由韓国党は国政ろう断勢力を捨てて、民心のある正しい政党に来るのが正しい」と結んだ。




洪準杓氏の影響は 保守結集なるか

与党の候補に決まった洪準杓候補は、韓国内で高い知名度を持つ息の長い政治家の一人だ。国政経験も多く、与党支持者としては心強い候補と見てよいだろう。支持率も、予備選2位だった金鎭台議員のものを吸収し、10%台に上昇するのは間違いない。潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長、黄教安(ファン・ギョアン)大統領代行が立候補を辞退している現時点では、最も有力な保守候補といえる。

一方で、前述したように大法院(最高裁)の判決を待つ身分であることや、慶尚南道知事の辞職時期についての批判もあり、選挙戦は一筋縄ではいかないものになるだろう。だが、洪氏はこれまでそうした「逆境」を、特有の強い弁舌と突破力で勝ち抜いてきた政治家でもある。臨機応変に対応していくものと見られる。

自由韓国党政党大会
会場では2010年3月に沈没した哨戒艦「天安」の犠牲者に対する黙とうが行われた。左派の会合でセウォル号犠牲者への黙とうが行われるのと対照的だ。筆者撮影。

受諾演説にあったように、貧しい農家の出身で苦学した経験を押し出し「庶民派」をアピールすることで、他の野党左派候補は洪候補との差別化に苦しむことになるだろう。洪氏は特に貧しい保守層の訴求力が強い点も見逃せない。

今後、正しい政党との連帯がうまくいけば、前回2012年の大統領選のような「保守層の結集」をもたらす可能性は高い。洪氏が候補となったことで、文在寅氏の当選で確実視されていた今回の大統領選が一旦フラットになったと見る向きもある。大統領選の行方は混沌としている。