国民の党六度目の予備選が4月2日に行われ、安哲秀候補が無傷の6連勝を飾り本選への進出が確実となった。本記事では3月30日に行われた同党最後のテレビ討論会の詳細をまとめ、大統領選の軸の一つとなる、安候補ならびに国民の党の主張を確認する。(ソウル=徐台教)

安哲秀候補が破竹の予備選六連勝

議席数39を占め国会第三党の同党は。4月4日の大統領候補選出日に向け、全国を巡回しながら予備選を行ってきた。2日の予備選はソウル・仁川地域のもので、三番目に多い35,502人が投票した。

結果は安哲秀(アン・チョルス、55)候補が得票率86.48%で1位、2位には10.62%で孫鶴圭(ソン・ハッキュ、69)候補が、3位の朴柱宣(パク・チュソン、67)候補は2.27%の票を得た。

国民の党予備選集計グラフ
国民の党予備選集計(4月2日現在)。安哲秀候補の独走だ。今日4日に大統領候補に指名されるのは確実だ。本紙作成。データは国民の党HP参照。

上記の表からも分かるように、安哲秀候補はしり上がりに得票率を増やしている。人口の多い首都圏の京畿道、ソウル・仁川地域での圧勝ということで、同氏の上り調子を如実に表す結果といえる。

安氏は直近の世論調査ではじめて支持率が20%を超えるなど、今いちばんホットな候補となっている。

安哲秀写真
安哲秀(アン・チョルス)元国民の党代表。大統領への並々ならぬ意気込みが感じられる。写真は安氏のHPより引用。

3日に最大野党・共に民主党の大統領候補が文在寅(ムン・ジェイン、64)氏に決まったことで、いよいよ「文在寅vs安哲秀」かと、韓国メディアはしきりに煽っている。




3月30日のテレビ討論会まとめ

確かに安哲秀候補は6連勝を飾った。だが、こうした「レース結果」よりも大切なのは、その主張内容だろう。大統領候補となる場合、公約集として整理されることになるが、本稿では国民の党予備選の一環として行われたテレビ討論会の内容を紹介したい。テーマは以下の7つ。気になるところだけでも一読をお勧めする。

(1)国会先進化法について
(2)選挙制度について
(3)GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)について
(4)連帯と自強論について
(5)南北関係について
(6)雇用について
(7)中国のTHAAD報復にどう対応するべきか

国民の党予備選期間中、最後の討論会は3月30日、テレビ局MBCの人気番組「100分討論」として生中継で放送された。約80分にわたり三候補のあいだで議論が交わされたが、本稿では今後のために、安哲秀氏の発言内容を中心にまとめた。

国民の党候補の自己アピール

それでも、国民の党の候補の紹介はしておきたい。三名の候補は安哲秀氏のほかに孫鶴圭(ソン・ハッキュ、69)元民主党代表、現同党顧問、朴柱宣(パク・チュソン、67)現国会副議長だ。まずは簡単な自己アピールの時間を持った。

孫鶴圭孫鶴圭

朴槿恵大統領の逮捕状請求の結果を待っている(編注:31日未明に逮捕)。大統領は庶民生活をした人でなければならず、民主主義に対する確固とした信念を持ち、民主化を経験した人でなければならない。国が陥っている危機を克服するためには能力、経験、知恵がいる。準備万端な大統領の私に機会をいただきたい。

安哲秀安哲秀

韓国は安全保障、経済、外交すべておいて本当に困難な状況にある。誰が正直で清廉なのか、誰が有能で責任感があるのか、国民統合と協治を誰が行えるのか、賢明に判断していただきたい。朴槿恵政権を支えた人は責任を取るべき。平和な朝鮮半島、共に良い暮らしができる韓国を作る。未来を拓く初めての大統領になりたい。

朴柱宣朴柱宣

韓国の危機と大統領の失敗は、無能とウソからできていた。今後は詐欺師の大統領が国を蝕むことがないようにしなければならない。このためには連帯により政権を奪取し、連合政府を打ち立て危機を克服しなければならない。また、協治と牽制により詐欺師を防ぎ、権限と役割を分け合い、参加と責任を共にする新しい国家が必要だ。約束を守る大統領になる。

ここからは安候補の発言を中心にテーマ別にまとめる。三名の討論会であるため、誰に向けて話しているのかは冒頭部分で触れるようにする。

国民の党予備選
3月30日、同党最後のテレビ討論会の様子。左から孫鶴圭、安哲秀、朴柱宣各候補。同党HPより引用。

討論会テーマ (1)国会先進化法について

国会先進化法とは、2012年5月に改定された国会法のこと。過半数を超える政党が議長に「職権上程」を簡単に要求することで、新たな法案を作り放題になるシステムを制限するもの。少数政党が法案作成プロセスから排除されることを防ぐことが目的だった。

安哲秀安哲秀

国民の党はついに三党体制を作り上げた。既得権を持つ二大政党(自由韓国党、共に民主党)制では韓国の問題を解決できないという認識から出発した。多党制を制度として定着させたい。そのためには国会議員選挙制度の改変、大統領の決選投票制の導入、国会先進化法の単純過半数制への改定が望ましい。もちろん、先に国会議員選出制度が変わってからの話ではあるが。国会先進化法ついてはどう思うか?

朴柱宣朴柱宣

国会先進化法は国会での奇襲採決や乱闘を防ぐために作られたが、国会を後退させる法に転落した。多党制の下では絶対過半数を超える党がないため、協治が不可欠だ。「仕事をしない国会」を作り出すこの法は必ず直す必要がある。この法の問題は、与野党の合意がない場合には、国会本会議に法案の上程ができない点だ。

国会議長による職権上程も非常時や重大事に限られる。法案の上程もできない。それ以外には国会議員の5分3が合意しなければならないため、事実上不可能だ。案件を迅速に処理するといっても、270日に近い時間がかかる。国民の党の立場から言えば、この改正が最優先だ。

国会が新たな法案を作る際には所管の常任委員会→法制司法委員会と→本会議の順に通過しなければならない。現在、法制司法委員会の委員長には正しい政党の權性東(クォン・ソンドン)議員が座っている。原則通り、与野党の合意が無い限り本会議の上程を一切行わないため、共に民主党、正義党など野党側が提案する「改革法案」はほぼすべて足止めとなっている。

これには法制司法委員会の各党幹事のうち、自由韓国党の幹事が強硬な親朴槿恵派の金鎭台(キム・ジンテ)議員であることも関係している。合意が無ければ法ができないというジレンマにはまっている。上記の問題意識はここから来ているものだ。




討論会テーマ (2)選挙制度について

安哲秀安哲秀

選挙制度はどう変わるべきか?今は「中・大選挙区制」とドイツ式の「政党名簿制」の二つの方向が議論されている。このどちらが良いのか?選挙制度を変える過程は国会議員の反発を呼ぶため、憲法改正よりも難しいという憂慮もあるが、選挙制度が変わらずに憲法改正になる場合、それこそが既得権を持つ両党の多選議員に、より多くの権限を分け与える問題がおきる。どう思うか?

朴柱宣朴柱宣

同意する。多党制による協治のためには、中・大選挙区制度に変わる必要がある。小選挙区制度には弊害があるため、場合によっては「都農複合選挙区制度」を導入する必要があると見る。ドイツ式の政党名簿制は死票を防ぐ良い制度だとは思う。

また、大統領の決選投票制は必ず必要だと思う。憲法改正の際には必ず入るべき。これにより、国政が安定し、大統領の足をひっぱる要素を相当部分修正することができる。多党制、決選投票の導入、選挙区制度の改変は不可欠と見る。

安哲秀安哲秀

党内の候補者選定の過程で「オープン・プライマリー(各政党で選挙候補者を選ぶ際に、党員だけでなく一般市民も参加できるようにすること)」が必要という意見があるが、これについては?

朴柱宣朴柱宣

上に向かう公選制度、有権者の意思に沿い有権者を選ぶ「オープン・プライマリー制度」は絶対的に必要だと見る。導入しているわが党の場合もそうだが、広報が広く行われない場合には問題があるように思える。選挙区制度が変わり、広報が前提になる「オープン・プライマリー制度」を導入すべきだ。

選挙制度の変更についての議論はまだ一般化されてはいないが、「死票を最小化する」するというㅡ目的の下で言及されることが増えてきた。

討論会テーマ (3)GSOMIAについて

朴柱宣朴柱宣

GSOMIA(ジーソミア、日韓秘密軍事情報保護協定 2016年11月に署名)に関連する党の立場と候補者の立場が異なるかもしれない。安候補の考えは?

安哲秀安哲秀

日韓関係は歴史問題のために非常に困難になっている。歴史問題が解決されない中で、安全保障の問題をどう解決していくのかが最大の課題。日韓関係は国益を最優先にし、歴史問題と安全保障問題を分けて考えるのが、もっとも理想的で未来を目指す関係に役立つと見ている。

GSOMIA自体は期間は1年だ。昨年11月からなので、今年11月になれば満了だ。この時に国益最優先の観点から再度検討するべきだ。

朴柱宣朴柱宣

現在のGSOMIAについては賛成なのか?

安哲秀安哲秀

外交上の約束というものがある。前政府で締結されたものについては、次の政府でも尊重するべきだ。今年11月の有効期間までは尊重する。




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