討論会テーマ (4)連帯と自強論について

この項では、今後、安哲秀候補が大統領選を闘う上で、安候補ならびに所属政党の国民の党がどんな考えをしているのかを紹介する。非常に参考になる内容だ。

討論の関係上、他の二候補が直接安候補に質問にぶつける場合と、間接的に言及する形に分かれていることをご了承願いたい。

朴柱宣朴柱宣

(安候補に対し)国民の党の自力での政権獲得は難しい。現在、安哲秀候補と文在寅候補だけが連合に反対している。独裁的大統領への欲望の現れではないか。朴槿恵大統領の弾劾から得るべき教訓としては、「協治」と「牽制」に基づく連合政府が代案になるというものだと思うが、安候補が他党との連合に反対する理由は何か?

当選できる根拠があるのか?当選後に帝王的大統領という弊害を防ぐための腹案があるのか?

安哲秀安哲秀

(朴候補に対し)単なる自強論ではなく、「開かれた自強論」と言いたい。当選した場合に、協治が必要になるのは間違いない。ただ、今までの予備選の過程で、国民の党の支持率が上がっている。

これは湖南地域などが、自立しようという党の姿勢を評価しているものと見てよい。一方で連帯を掲げる政党や政治家は支持率を下げている。政党の本来の姿、ビジョンを掲げることがまず正道だと考える。

孫鶴圭孫鶴圭

(朴候補に対し)安候補は改憲への言及は少なく、政治改革として選挙法改正を主張するが、これは多党制を基礎にした考えといえる。大統領制と多党制を並べる場合、これは常に「与小野大」構造であることを意味する。多党制がしっかり行われるためには、多党制の下での連立政権が不可欠だ。

このため、多党制は選挙法の改正だけでなく、権力構造の改編を伴うものだ。まずは権力構造の改編を行い、それから選挙制度の改正を行う順序についてはどう思うか?

朴柱宣朴柱宣

(孫候補に対し)完全に同意する。今回、五大政党からそれぞれ大統領候補が出るが、簡単な選挙にはならないと見ている。とはいっても、失敗(落選)した後に後悔しても始まらない。故金大中(キム・デジュン、DJと呼ばれる)大統領が、クーデター勢力といえる金鍾泌(キム・ジョンピル、元国務総理でJPと呼ばれる)と「DJP連合」で政権を取った。

安候補の自強論の根拠が疑わしい。大統領になるためには、政治勢力間の連合が不可欠ではないか。

安哲秀候補の「自強論」はこの日の討論会で最もたくさん言及されたテーマであった。党論後半部の内容をつなげる。朴柱宣候補と孫鶴圭候補のあいだで交わされた議論だ。討論会の構成上、安候補はこの部分で口を挟むことはできなかった。

朴柱宣朴柱宣

効率的な国政運営のためには、大連合が必要だという孫候補に同意する。ある人は、安候補の自強論を「飛行機に乗らずに米国に行くようなものだ」と例えている。文在寅氏の覇権を防ぐべきなのに、と。

自強論の現実的な問題は何だと思うか?

孫鶴圭孫鶴圭

自強論は「自分一人でやろう」という話だ。国会内には五つの政党があって、国民の党の議席は39席だ(韓国の国会議員は300席)。国民の目から見ると、わが党の三人のうち誰が大統領になっても、39席で安定的な連立は無理だと映るのは当然だ。

支持率も今後、頭打ちになると見る。「1対1になる(文在寅対安哲秀になるというもの)」というのはあくまで安候補の主張に過ぎない。

そこまでどうやってたどり着くのか。自然とできるものではない。一緒に政府を作ろうという姿勢がいる。そして大統領候補を予備選なり協議なりで一本化する形で、連立政府を選挙前に作ろうということだ。

朴柱宣朴柱宣

わが党は大連合、大連立をするにあたり、中道改革勢力として、そして「共に民主党」の代案勢力として差別化をしている。朴槿恵大統領を支えた政党(自由韓国党のこと)は国政ろう断に対する責任があるため、国民の支持を得ることは難しいだろうという判断が支配的だ。

しかし、客観的にわが党の支持率は「共に民主党」の4分の1しかない。自強論にこだわるあまり、大連合の交渉テーブルから除外されはしまいか。逆に攻撃的に、先制的に連帯を訴えていくべきでは。

孫鶴圭孫鶴圭

共感する。国民は積弊清算や国の変化を求めているが、安定した状態の中での変化を求めている。だからこそ経験のある安定したリーダーが必要だし、勢力も安定していなければならない。

国民の党が連合・連帯を主導し、中道改革勢力を集め、改革的な連合政府を作ることが連帯論の核心になるという話だ。

朴柱宣朴柱宣

連合による政権奪取と連立による協治、牽制による国政運営を拒否することで、ややもすると帝王的大統領制に固執するのではないかという非難を受けかねない。同意するか?

孫鶴圭孫鶴圭

同意する。




討論会テーマ (5)南北関係について

議論は次いで、北朝鮮との関係を今後どうするべきかという内容に移った。

孫鶴圭孫鶴圭

安候補は「自強安保」、「韓米同盟強化」を主張し「キルチェーン(北朝鮮の攻撃を事前に察知し、先制攻撃を加えるというもの)」、「韓国型ミサイル防衛システム(KAMD、高度10~30キロの低い層で北朝鮮のミサイルを迎撃するシステム)」を早期に完成させるとしている。THAAD(高高度防衛ミサイル)配置については初めは反対すると言ったが、「国家間の合意を尊重するべき」として今は賛成に回った。

「国防費をGDPの3%に増やす」、さらに「今は北朝鮮への制裁局面だ」というように、軍事的対応に主眼を置いている。もちろん、外信記者クラブで行った会見では、「四者会談」「六者会談」を提議していたが。基本的には北朝鮮への制裁を原則としながら「制裁こそが北朝鮮を交渉のテーブルに着かせる手段だ」という。

北朝鮮に対する制裁が、南北の、朝鮮半島の危機を克服するために有用なのか?

安哲秀安哲秀

制裁の目的は何か、という質問がもっとも肝心だ。過去、制裁で崩壊した体制は存在しない。制裁の目的が体制の崩壊となることはない理由だ。制裁の果てに、私たちが望む時期、望む条件で交渉できる場を作るのが目的だ。このためには制裁と対話が並行されるべきだ。

それでこそ、私たちが望む交渉をなるべく早い時期に開き、それを通じて緊張を緩和する協議ができると思う。

孫鶴圭孫鶴圭

制裁と対話を並行すると言うが、安候補は常に「自強安保」を強調している。「キルチェーン」というのも砕いて言えば先制攻撃論のことだ。軍事費も上げるとするなど、軍備強化を主張している。軍事対応を基本軸にするものだ。THAADにも賛成だ。こうした制裁をもって、北朝鮮に対しどう対話を誘導しようというのか。

安哲秀安哲秀

制裁により、ある体制が厳しい局面に立たされる場合、別の国と対話をせざるを得なくなる。

孫鶴圭孫鶴圭

(発言を遮って)今、私たちは国際的な協調の下で北朝鮮に制裁を続けているが、核兵器の開発やミサイル発射を止められていない。そればかりか、現実はさらに開発が強化されている。

安哲秀安哲秀

そうだが、イランの例もあるように、ある程度時間をかければ、結果として対話の席に出てこざるを得ない。

孫鶴圭孫鶴圭

イランと北を同じに見るのは無理がある。北朝鮮の隣には中国がいる。私は軍事的な抑止力が必要だとは思うが、平和のための処置が必要だと考える。米朝対話、米中関係、米韓関係が重要だ。開城工団、金剛山観光の再開など、対話のサインを送る必要がある。

米中を朝鮮半島に呼んで、中国に対しては「北の核開発の裏にあななたちがいるのでは」とし、米国については「いつ北朝鮮を国家として認めるのか」として、北朝鮮と米国が対話をする道を、韓国が開き、そのために南北が会話をする道を開くのが必要だと考える。

安哲秀安哲秀

全体的に目指すところは孫候補と同じだ。一日も早く交渉のテーブルが作られるべきだと見るとの想いに変わりはない。国防費の増額は攻撃のためでなく、挑発を防ぐ抑止力としてだ。防御的手段としての国防費の増額で、これこそが自強安保だ。米朝対話も制裁と対話を並行した後で、可能になることであると主張したい。




討論会テーマ (6)雇用について

これまで安全保障の話が続いたが、韓国の大統領選挙最大のテーマはあくまでも、経済だ。体感景気が最悪と言われるなか、どう経済成長を実現させていくのか。

安哲秀安哲秀

(孫候補に対し)過去、11年のあいだ一人あたりGDPが3万ドルに届かない時期が続いている。米国は4年、日本は5年で2万ドルから3万ドルに上昇した。3万ドル時代に突入するには雇用の創出が原動力にならなければならない。雇用は自尊心であり、家族を守る力だ。雇用創出についての考えは?

孫鶴圭孫鶴圭

経済が委縮している。この打開策は南北平和であると見る。開城工団、金剛山観光の中止は南北関係において悪影響をもたらした。南北交流をより拡大し、平壌、新義州(シニジュ)、南浦(ナムポ)、羅先(ラソン)などにも積極的に進出すべきだった。

北に対しては、制裁の拡大より交流協力を広げていくべきだと考える。第4次産業革命への対応も必要だ。新成長動力の作成には国家の投資・支援がいる。

安哲秀安哲秀

雇用は政府や政治ではなく、あくまでも民間と企業が作るものだ。政府の仕事は企業が実力を発揮できる基盤を作ることだ。中でも最も大事なのは教育改革で、創意的な人材を育てることだ。科学技術への投資、公正な競争ができるような環境を作ること、この3つが4次産業革命において、より大事な政府の仕事と考える。

孫鶴圭孫鶴圭

政府は企業を支援するインフラを作るという話だ。

安哲秀安哲秀

公正な環境の下でのみ雇用の増加や成長が可能になる。実力がバック(威光、コネ)に勝てる世の中では誰もチャレンジしなくなる。これこそが不公正な社会だ。公正な社会はバックに勝てて、未来に希望を持てる社会だ。成長と公正は分けて考えてはいけないというのが、私が深く共感する持論だ。




討論会テーマ (7)中国のTHAAD報復にどう対応するべきか

これは大事な案件なので三候補の議論をそのまま掲載する。昨年7月に当時の朴槿恵政権がTHAAD配置を発表して以降、中国との関係が悪化、中国による経済的な報復措置は今も広範囲で続いている。

朴柱宣朴柱宣

まずは中国の経済的報復により被害を受けている国民に慰労の言葉をかけたい。政府の対策が遅れている。北朝鮮と中国は同盟関係により、いつでも(韓国と)敵対的になる可能性がある。まずは韓米同盟を強化して中国の経済報復を解決する方向に進むべきと考える。

次に、THAAD設置の原因は北朝鮮にあるので、北朝鮮が非核化を行うか、中国が役割を果たし可視的な朝鮮半島の非核化が行われる前提で、THAAD撤収というオプションを提示するべきだと思う。また、THAAD配置が「太陽政策の放棄」を意味するのではないかという人がいるが、金大中大統領でもTHAAD配置を容認したと思う。

しっかりとした安全保障の中で北との対話と交流協力を行うのものだ。軍事的に不安な状況では対話もできないし、朝鮮半島の平和は維持できないと考える。

安哲秀安哲秀

朴柱宣候補と同じ考えだ。今は中国政府を積極的に説得する時だ。最近25年は韓中関係が歴史上最高の時期だった。お互いに真の友達になろうとした。この関係はこれからも続くべきだが、友達にはまた、超えてはならない一線がある。そういう意味で最近の中国の行動にはとても憂慮を覚える。

二つの面で中国政府を説得する必要がある。まずは北朝鮮の核問題は韓国の安全保障における最大の脅威だということ。このため、安全保障に関しては米国と協調せざるを得ないという点を説得しなければならない。次に、朝鮮半島の不安定化は中国の国益にもかなわないということを説得するべきだ。

妥協できる点は、中国に対し北朝鮮の核問題を解くきっかけができるならば、韓国から米国にTHAAD撤回を要請すると働きかけるという点。これが問題解決の方法だ。すべては北の核問題から起きている。

孫鶴圭孫鶴圭

外交こそ経験が大切だと思う。朴槿恵大統領が天安門広場で習近平主席とプーチン大統領の隣に立った時、韓中関係は最高のように思えたがそうではなかった。安哲秀候補はTHAADが入ってくることに初め反対していた。その後に国家間の合意だからしょうがないと賛成に回ったが、このように外交問題の意見がふらふらすると、今後、大ごとが起きる。

THAADに関しては、まず韓国政府が兵器としての効用について韓国民に説明するべきだったが、韓国政府は国民を説得できなかった。THAADは北朝鮮の核からソウルをカバーできない。すると「THAADは在韓米軍を守るものだ」と言葉を変えた。中国が反発するのは米国のMD(ミサイル防衛システム)の一環だからだ。これに対する我が国の立場を中国に説明できないでいる。中国にしてみれば自国が監視されているという見方になる。

THAADについては北朝鮮の安全を保障する平和的な接近がいる。私が大統領になったら、米中を朝鮮半島に集め中国に対しては「北の核開発を止める気があるのか」と説得を促し、米国には「いつまで国家として認めないつもりなのか」と修交を促す。北が「体制を維持できる」という安心ができる平和的な体制が必要だと言う話だ。平和的に物事を進めるべきだ。

朴柱宣朴柱宣

THAAD配置の過程で、政府が「要請も論議も決定事項もない」という「3NO」の立場を示したため、国論は分裂し国民の不信を招いた。韓国内で賛否が拮抗していることから、中国側としても「経済報復をすれば韓国はTHAAD配置を撤回するかもしれない」という考えに至った。

今後THAADが必要だと思うのならば、国民の合意に基づくものにし、総力戦で中国の経済制裁に耐え抜くことが大事だと思う。また、THAAD、日韓慰安婦協定(2015年12月)に関しては、典型的な密室外交だ。私が大統領になったらこれまでの過程を公開することで透明性を高め、特に慰安婦協定では追加交渉を行っていく。

安哲秀安哲秀

次期政府では何よりも、就任直後から外交の懸案を解決するのが何よりも大切な喫緊の課題となる。私が大統領になる場合は、潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長に外交特使の職についてもらう。

そして早いうちに米国、中国、日本政府と交渉しながら、交渉の枠を作り、国家間の関係がより正常化するよう助けてもらう。これこそがたくさんの外交問題を最も短時間で解決するいい方法だと思う。




司会者:潘基文前事務総長に今の話を伝えたか?

安哲秀安哲秀

まだしていないが、国家的な危機状況でもあるし、快諾してくれると思っている。

孫鶴圭孫鶴圭

もちろん潘前事務総長を起用するのはいい考えだ。ただ、大統領の所信が重要だ。南北対話、交流協力をする場合に、はじめて米国に対して物を言えるようになる。

私は朴候補と異なり、金大中大統領ならTHAADに反対したはずと見る。米中の対立軸ができることを望まなかったはずだ。南北の会話を米国との交渉手段として利用しようとしたはずだ。外交には経験がいる。

朴柱宣朴柱宣

THAAD設置のような問題にあたる場合、政治家には知恵がいる。こうした問題は政争の対象でもないし、政治的な利害得失の問題として利用してはならない。孫候補の言う通り、THAADが配置されず、朝鮮半島の非核化が解決しさえすればどれだけいいか。

しかしそれはただの希望だ。現実は北朝鮮は韓国を馬鹿にしているし、核の攻撃に無防備に姿をさらけ出している韓国を相手に対話を行い、朝鮮半島の非核化を行うというのは、妄想にすぎないのではないか。

このテーマは今後、大統領選本選でも重要になってくるポイントだ。続けて追っていきたい。

討論会最後のひと言コメント

討論会の最後に所信表明を行う時間があった。今日4日に国民の党の候補が決まるため、意味は大きくないが、安候補のコメントもあるため引用しておく。

孫鶴圭孫鶴圭

国家が危機に瀕している。特権と既得権の積弊を清算しなければならない。さらに大事な課題は、国民の生活を変えなければならないと言うことだ。改革をするのも安全に行われなければならないし、そのためには国政における実績がいる。国民から受け取った経験と知恵を、国のためにお返したい。準備は万端だ。

安哲秀安哲秀

政権交代は既定事実だ。今回の大統領選は、わたし安哲秀と文在寅の対決だ。より良い政権交代を選んでいただきたい。誰が覇権主義を越えて統合を行えるのか?誰が既得権を破り改革を行えるのか?誰が産業化と民主化を越え、未来を拓くことができるのか選択しなければならない。

統合・改革・未来どれをとっても、私・安哲秀だ。文在寅に勝てるのは私・安哲秀だけだ。ついに安哲秀の時間になった。3月の風と4月の雨が、5月の花を呼ぶだろう。韓国をふたたび、夢を見られる国にする。

朴柱宣朴柱宣

今は統合で知恵を集め、役割と権限の分配を通じ、責任と使命を果たす国政運営のスタイルにならなければならない。派手な公約や甘い約束ではこの国を変えられない。今後は国民に「ウソをつかない大統領、約束を守る大統領」にならなければならない。それでこそ国民は信じる。

大統領が嘘をつき、側近と秘線に権力を分け与えながら、彼らのために権力を行使するのなら、誰が大統領を信じるだろうか。詐欺師がふたたび大統領になるのは韓国の不幸であり、朴槿恵の教訓を無視したことになる。