共に民主党の予備選最終日を迎え、文在寅候補が通算4連勝、過半数の得票で同党の大統領選候補に選ばれた。文氏は受諾演説で党内の団結を呼びかけた。(ソウル=徐台教)

首都圏・江原道・済州道で60.4% 通算では57%

4日午後、ソウル市内で共に民主党の予備選投票が行われた。四回目となるこの日の投票は、ソウルをはじめ、江原道・済州道を含む地域での投票と、全国の選挙人を対象とした世論調査(3月31日~4月2日)を合算する形で争われた。

結果は文在寅(ムン・ジェイン、64)候補が60.4%の得票率で1位、2位には22.0%で李在明(イ・ジェミョン、52)候補が、3位には17.3%の票を集めた安熙正(アン・ヒジョン、51)候補となった。得票率0.3%の崔星(チェ・ソン)候補は最下位に終わった。

共に民主党大会
共に民主党の予備選は3日、ソウル市内の高尺スカイドームで行われた。数千人の党員たちが集まり、応援し、投票した。筆者撮影。

これまでの予備選結果をすべて合わせた得票率では、文在寅候補が57.0%で1位、安熙正候補が21.5%で2位、李在明候補が21.2%で3位、崔星候補が0.3%で4位となり、文在寅候補の1位が確定した。

また、57.0%と過半数を獲得したことにより、決選投票もなく、共に民主党の大統領候補は文在寅元代表に正式に決定した。




受諾演説で「新しい韓国像」を提示

投票結果が発表された直後、文在寅候補は受諾演説を行った。

文候補はまず、予備選に参加した国民ならびに党員、そして予備選を闘った他の三候補に対し「深く感謝する」と述べた。

次いで、「69年前の今日(4月3日)済州道で無辜の民が犠牲になった」と、数万人の犠牲者を出した1948年からの「済州4.3事件」に言及し、「69年後の今日を持って、分裂と葛藤の時代は終わらなければならない」と力強く宣言した。

続けて「国益そして国民よりも優先される理念はない」とし「保守と進歩を分ける分裂の二分法をごみ箱に送る時が来た」と韓国社会に根深く残る理念対立を乗り越えることを提案した。

さらに「今回の大統領選挙は『保守対進歩』の対決ではなく、正義と不正義か、公正か不公正か、積弊勢力か改革勢力かの選択だ」と規定し、社会をどう見るべきかを主張した。

予備選の過程で、時に罵り合いにまで発展した党内へのフォローも積極的に行った。

文在寅秋美愛写真
開票後、ポーズを決める文在寅候補と共に民主党の秋美愛(チュ・ミエ)代表。同党HPより引用。

「歴史上もっとも美しい予備選だった」と自画自賛する一方、三候補の公約と長所をそれぞれ具体的に挙げ「三候補の公約はこれから私の公約であり、私たちの旗印だ」とし、今後、ひと月余りの大統領選を闘うためにノーサイドと団結を促した。

そして「国民の熱望と党の熱望をすべて抱き、すべての努力と責任を果たす」と大統領選に臨む姿勢を明確にし、「経済と安全保障、不公正・不正腐敗・不平等の清算、国民の統合」という「3つの約束」を明かした。

分裂を乗り越え統合へというのがこの日の演説の基調であった、。地域統合・世代統合・進歩と保守を超える統合」など「新しい韓国の姿」の理想像が語られた。

文候補は最後に「世界の民主主義に歴史を刻んだ、偉大な国民よる偉大な大韓民国」を作ると熱を込め、「偉大な旅程を共に歩んでいこう」と結んだ。

(受諾演説の全文訳は記事の最後に添付)




安熙正候補は「実力不足を痛感」も「ぶれずに歩む」

文在寅氏に大統領候補の座を譲った三氏は、ソウル市汝矣島の民主党舎内で行われた記者懇談会で、胸の内を明かした。聯合ニュースを引用する。

なお、予備選現場で候補が決まった直後、三氏が応援演説をしなかったことについて一部で不仲説がささやかれた。だが、三氏とも地方自治体の現役の長であることから、公職選挙法に抵触するため演説を行わなったことが後に明らかになった。

共に民主党各候補
ノーサイド後の四候補。顔には疲れが見える。左から安熙正、文在寅、崔星、李在明各候補。同党HPより引用。

記事によると(リンク)、2位の安熙正忠清南道知事は「自分の実力が足りなかったという正直な自責の念がある。ち密な戦略があって『大連立』などの議題を投じたのではない。注目される候補となった瞬間、これまでしてきた話がみなさんに捕捉された」と語った。

また「多数の考えに迎合したくなる誘惑との闘いでもあった。新しい時代に挑戦することに対する恐れから多くを学んだ」と語る一方、「2017年の自身の挑戦が新しい民主党の出発のための芽となった。国民統合と世代交代の道をぶれずに歩んでいく」と今後の抱負を語った。

文候補への支援については「最善を尽くす」としながらも「法的に選挙中立を守らなければならないため、とても制限されたものになる」とした。「党員として市民として党の勝利を手伝う」との明確な姿勢を示した。




李在明候補は「国民の夢かなえる」と決意新たに

一方、僅差の3位に終わった李在明城南市長は、予備選会場で記者たちと会い想いを語った。こちらも聯合ニュースを引用する(リンク)。

李候補は「最善を尽くしたが力不足だった。(文候補の)過半数を阻止したかったが、大勢が余りにも強かった。残念だ」と明かした。

しかし「私たちは一つのチームとして、各自のポジションを決めるゲームをしてきただけだ。競争した訳であって、戦争した訳ではない。(予備選の過程を受けた)小さな傷は早めに治して、チームの一員として同じ道を歩む」と強調した。

李在明応援団
3日の予備選の見どころの一つは各候補者応援団の応援合戦だった。一番熱心だったのが李在明候補の支持者たちだ。庶民派である李氏の人気を再確認した現場だった。筆者撮影。

また同紙によると、2位の安候補に0.3%差で敗れた点にも「2位と3位に意味はない、1位だけに意味があるのが政治だ」とし「世論調査の2倍の結果が得られたことが誇らしい」と語った。

そして「国民が私を通じてかなえたかった夢が崩れないように、足りない部分を準備していきたい」と同氏らしいコメントを残している。




他党の反応はおしなべて冷淡

今年に入り世論調査で一度も1位を明け渡していない文在寅氏が大統領候補となったことで、各党も論評を発表した。

自由韓国党は「ひと月あまりの間、国民の支持を得て希望に満ちた未来を作るための、善意の競争を行えるよう期待する」と短い論評を発表した。

一方、同党の洪準杓(ホン・ジュンピョ、62)候補の選対本部では「国民が抱いている疑惑を明らかにせよ」と明かし(連合ニュース)、長男の就職あっせん疑惑などに対応することを要求した。

国民の党は、文在寅候補との対決姿勢を強めている。自由韓国党と同様に就職あっせん疑惑への解明を迫る一方、文候補の選対本部長を務める宋永吉(ソン・ヨンギル)議員が国民の党の安哲秀大統領候補に対し「文在寅氏の補助タイヤ」と評したことに対する怒りを隠さない。

公式論評にお祝いの言葉がひと言もないなど、「全面戦争」の構えを早くも見せている。

劉承旼写真
正しい政党の劉承旼(ユ・スンミン、59)候補。3日、支持基盤のある大邱(テグ)市内の西門市場を訪ねた。同党HPより引用。

正しい政党も批判的な姿勢だ。「正義と不義の対決」とした文候補の受諾演説を例にあげ「自身たちだけが正義で常識的で公正だという覇権主義的、二分法的な思考を如実に表している」と批判した。

同じ左派勢力の正義党は公式な論評が出ていない。同党の大統領候補である沈相奵(シム・サンジョン、58)代表もSNSなどを通じ文候補選出について言及しなかった。




文在寅候補、受諾演説全文訳

3日の文在寅候補の受諾演説全文訳を掲載する。翻訳は筆者。

共に民主党 文在寅候補 受諾演説全文(2017年4月3日)

偉大な国民による偉大な大韓民国を作ります。

まず、われわれ共に民主党の予備選に参加していただいた、多くの国民と党員同志たち、そして美しい競争の果てに私に力を集めてくれた安熙正、李在明、崔星候補とその支持者の方々に深く感謝します。

69年前の今日、済州で理念の意味もしらない無辜の人々が理念の武器により犠牲となりました。理念のために分かれたわが祖国は、それ以上に地域に分かれ、分裂と葛藤と対決の構図を抜け出せませんでした。

それから69年後の今日、私たちの大韓民国で分裂と葛藤の時代は終わらなければならないと私は宣言します。

国益よりも優先される理念はありません。
国民よりも大切な理念もありません。

この地で左右を分かち、保守と進歩を分ける分裂の二分法はもう、ごみ箱に送らなければなりません。

私たちの心と頭に残った対立と恰好、分裂の小さなかけらまでも、迷うことなく捨てなければなりません。

私は今日、大韓民国
新しい国民の歴史を始めます。
分裂の時代と断固として決別し、正義の統合の時代へと進んでいきます。

尊敬する国民のみなさん、党員同志のみなさん!

今日、私たちに勝者と敗者はいません。勝者がいるとしたら、それは、ろうそくを掲げた私たち国民たちです。国民主権時代を要求する全ての国民の勝利です。

文在寅バナー
予備選終了後、共に民主党HPに掲げられた文在寅候補のバナー。「新しい大韓民国」とある。同党HPより引用。

歴史は命令します。
国民も命令します。
国民が集権してこそ政権交代だ!
国民の生活が変わってこそ新しい大韓民国だ!
時代を変えろ!
政治を変えろ!
経済を変えろ!
文在寅、その意を受け取り、国民大統領時代を開きます。

今回の大統領選挙は保守対進歩の対決ではありません。
正義か不正義かの選択です。
常識か没常識かの選択です。
公正か不公正かの選択です。
過去の積弊勢力か、未来の改革勢力かの選択です。
積弊連帯による政権の延長を防ぎ、
偉大な国民の国に進んでいかなければなりません。

私が政治を決心した目標もそこにあります。
韓国の主流を変えたかったのです!
これから、
政治の主流は国民でなければなりません。
権力の主流は市民でなければなりません。
だから、国民が大統領です。
大韓民国の憲法第一条の精神で行かなければなりません。

私と競争した三人の候補も価値も異なりませんでした。
安熙正の統合精神!
李在明の正義の価値!
崔星の分権政治!
これから私の公約です。
これからは私たちの旗印です。

尊敬する国民の皆さん!
党員、代議員同志のみなさん!
この度、わが党は歴史上もっとも美しい予備選を闘いました。
私は自負します。
これこそが民主主義です!

三人の同志のおかげで、わが党はさらに大きくなりました。
おかげで私も学ぶことができました。
安熙正同志からは、堂々と所信を主張し評価を受けるという
真の政治家の姿勢を見ました。
私たちの政治を一段階変えてみせるという発想の転換が大胆でした。

李在明候補からは熱い情熱を学びました。
彼の覇気と熾烈さは人一倍でした。

崔星候補の挑戦精神も美しかったです。
最後まで堂々と完走したことは、ながく記憶されるでしょう。
三人の同志の姿を熱い拍手とともに記憶してください。

三人の同志と競争することができたのは、私にとって大きな幸せでした。
三人の同志が私の永遠の政治的同志として残ってくれることを願います。
三人の同志が未来の指導者として、より成長できるよう、私も共に歩んでいきます。
民主党政府が次も、その次も責任を持って受け継がれるように、私が必ず政権交代の扉を開きます。

私は政権交代の希望となっている、わが共に民主党がとても誇らしいです。
特に、214万人におよぶ国民が予備選に参加したことで、政権交代の希望はより強固になりました。
5月9日、必ず勝利で報います。

私は今この瞬間から、共に民主党の第19代大韓民国大統領候補です。
国民の熱望と党の熱望をすべて抱いて、私が担うべきすべての努力と責任を果たしていきます。

私は今日、民主党の大統領候補として、わが党のすべての国会議員たち、すべての党員同志に要請します。
皆で共に歩んでいきましょう。
その間、どの選対本部にいようが、誰を支持していようが、これから私たちは一つです。
皆で共に歩んでいきましょう。
一緒になる時、私たちは強いです。
私たちが共に歩めば必ず勝てます。
そうでしょう?




私は今日、民主党の大統領候補として、国民に3つを約束します。

一つ目は経済と安全保障
倒れた二つの柱を必ず真っすぐ建て直します。
疲弊した民生を抱きしめ、
墜落する経済を再生し、
穴の開いた安全保障を建て直すことに
渾身の努力を注いでいきます。
これが真の経済だ!
これが真の安全保障だ!
皮膚で感じて目に見えるように成果を見せていきます。
すでに!その準備ができています。

二つ目は不公正、不正腐敗、不平等を確実に清算します。
国民を挫折させたすべての積弊を完全に清算します。
誰かを排除し、排斥することではありません。
みなにとって公正で、正義のある国家に向かっていこうということです。
不公正なシステムを、公正なシステムに変えていこうという話です。
全ての積弊は法に沿った手続きにより清算されていきます。
すでに!その準備ができています。

三つ目は連帯と協力で、統合の新たな秩序を作っていきます。
国民の常識と正義でと統合されることを願います。
過去ではなく未来へと心が集まることを希望します。
国民の要求は簡潔です。
正常な国を作ろうということです。
扉を大きく開いてたくさんの人と一緒に歩んでいきます。
すでに!その準備ができています。

国民のみなさん!
党員、代議員同志のみなさん!

新しい大韓民国は「国民みんなの国」にならなければなりません。
互いの痛みに共感する人たち、常識と正義の前に手を差し伸べる人々、
こんな国民が主役で、主流になる国にならなければなりません。
私はすべての国民の大統領になります。

「反文連帯」「非文連帯」というのは、政権交代を恐れ、わたし文在寅を恐れる積弊連帯に過ぎません。
私は積弊勢力によるどんな連帯を恐ろしくありません。
私とわが党の後ろには、政権交代を願って止まない国民がいます。
国民と共に行う政治、未来に進む政治でなければなりません。
私と民主党は国民と連帯していきます。

私たちは成し遂げられます。
世界の民主主義に歴史を刻んだ偉大な国民です。
国民は準備ができているし、私も準備ができています。

嶺南、湖南、忠清と全国ですべからく支持を受ける、地域統合の大統領になります。
青年と中年、老年層からもすべからく支持を受ける、世代統合の大統領になります。
保守と進歩を超える国民統合の大統領になります。
雇用問題を必ず解決し、雇用大統領になります。
清廉で誇れる大統領、
公正で信頼できる大統領、
暖かく親友のような大統領になります!

偉大な国民による偉大な大韓民国を作ります。
大韓民国の栄光の時代はまだ始まっていません。
その偉大な旅程を今日から始めます。

共に歩んでいきましょう。

ありがとうございます。