4月13日に行われた第一回テレビ討論には、有力候補5人が参加した。韓国社会の大統領候補とされる人物がどんな会話をしているのかを日本の読者に知ってもらうために、敢えて長文の要約記事を載せる。(ソウル=徐台教)

第19代韓国大統領選候補一覧
5月9日投票の第19代韓国大統領選の主要候補者一覧。国民の党の安哲秀代表は4月17日に議員辞職を行った。これに伴い国民の党の議席は39席となった。本紙作成。(沈相奵候補のルビが間違っているため、明日18日に差し替えます)

前回の全体質問まとめに続いて、「政策検証討論」を候補者別にまとめる。第一弾は「正しい政党」の劉承旼(ユ・スンミン、59)候補。

劉承旼候補は「三重の危機」を強調

「政策検証討論」候補当たり15分の持ち時間。最初の3分は候補者がプレゼンテーションを行う。次いで各候補と3分ずつ(質問90秒、回答90秒)討論を行う。討論内容は政策に限定される。

劉承旼氏は政策プレゼンテーションでまず、「保守の新しい希望」と自己紹介し、「韓国は安保危機、経済危機、共同体の危機という三重の危機にある」と分析した。

まず安保危機に対し「国会の国防委員会、外交委員会に長く所属、国防委員長を歴任し誰よりも詳しい」と安全保障に強い候補であることをアピールした。

劉承旼候補写真
正しい政党の劉承旼(ユ・スンミン)候補。経済学の博士号を持ち、理知的な人物とされるが、人気が全く上昇せず苦戦が続く。世論調査の支持率は2~3%止まりだ。劉承旼候補選対本部フェイスブックより引用。

続いて「進歩派の候補たち(編注:安哲秀、文在寅)は保守票を得ようと、韓米同盟やTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備について以前の主張を変えているが、こんな一貫性の無い態度では安保危機は解決できない」と指摘した。

その上で「韓米同盟は過去のどんな時代よりも重要になっている」と規定した。

また、「不健全な企業経営、家計負債の問題などを解決することが非常に重要。解決できない場合には97年の『IMF危機』が再度訪れるかもしれない」とした。

解決策としては「成長戦略として、科学技術と産業界を中心にする『革新成長』にすべてを注ぐ」と戦略を述べた。

最後に「共同体の危機である」とし、「低成長、低出産、両極化に対し一貫した公約を準備し、共同体の内部からの崩壊を防ぐ」と約束した。

ここから、各候補3分の持ち時間で劉承旼候補と討論を行った。質問者の各候補は1分半、劉承旼候補も1分半の時間を使える。まずは正義党の沈相奵(シム・サンジョン、58)候補から。

質疑応答:沈相奵候補「法人税引上はどうか」

沈相奵沈相奵

公約を見ると、最低賃金の引き上げ、契約社員の問題などには積極的な案を出している。増税しての福祉拡大、法人税の扱いなども合わせ、他の誰よりも私の主張と近い。法人税の引き上げについてはどう思うか。

劉承旼劉承旼

法人税については、法人所得の多い大企業に対し、李明博政府以前の水準にいったん引き上げる。「中負担・中福祉」のうち中負担には、法人税の引き上げだけでなく、高所得者に対する所得税の引き上げ、次に財産税や保有税の部分が入る。

中福祉に必要であるならば、付加価値税にも手をつける用意があるなど、多様な税金引き揚げを検討している。

沈相奵沈相奵

法人税の引き上げについて、正義党、国民の党、共に民主党で公約にしているが、文在寅、安哲秀両候補は明言していない。これは卑怯ではないか。

劉承旼劉承旼

文、安候補が主張する数多くの福祉、労働、教育プログラムについて財源はどこにあるのか。法人税のどの部分を引き上げるのか、所得税はどうするのかなどについて、人気取りのために避けるのではなく、政治家であるならば立場を明らかにするべきだ。

沈相奵候補の持ち時間はここまで。最下位争いを続ける候補同士で、上位候補を攻撃したかたちだ。次いで文在寅(ムン・ジェイン、64)候補の質問時間だ。



質疑応答:文在寅候補「過去の政権ではなぜ減税側にいたのか」

文在寅文在寅

李明博政権時代の富裕層減税、とくに法人税の引き下げは間違っていたと認めるか。

劉承旼劉承旼

認める。李政権の2008年当時にも減税を中断するように公の場で提案した。

文在寅文在寅

それならば朴槿恵政府の時には、なぜ戻せなかったのか。

劉承旼劉承旼

朴槿恵政府が「増税なき福祉増大」を進めたが、私がそれに反対したため、朴大統領に目をつけられた。

文在寅文在寅

朴槿恵が集権する過程で大きな役割を果たしたのにも関わらず、なぜ初めから指摘できなかったのか。

劉承旼劉承旼

違う。私は野党が法人税に対し指摘する前から朴大統領に過ちを指摘してきた。そのために大きな政治的な損失があったことは文候補が誰よりも知っているはずだ。

次いでTHAADの話が出たが時間切れで後に持ち越された。次の質問者は自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ、62)候補。

質疑応答:洪準杓候補「劉候補はカンナム左派」

洪準杓洪準杓

今日何よりも驚いたのが、劉承旼候補の公約が、国民誰もが知る左派政治家の沈相奵候補のものと非常に似ているという点だ。それにも関わらず、保守だ、右派であると強弁するのは遺憾だ。

2007年にハンナラ党(現・自由韓国党)の予備選で、朴槿恵候補が「税金を減らし、規制を無くし、国を正そう」という公約を出したが、今やそれをすべてひっくり返した。世間では劉承旼候補は「裏切り者だ、カンナム左派(編注:富裕層だが左派の意)になった」と言っている。

劉承旼劉承旼

左派ではない。洪準杓候補のように、財閥や大企業の利益を代弁すえう政策では今後、保守の立つ瀬はなくなる。そして2007年の公約と私は無関係だ。私は当時も減税部分で最後まで朴槿恵候補と意見が合わなかった。

洪準杓洪準杓

江南(カンナム)左派という評については。

劉承旼劉承旼

まったく同意しない。洪候補が「極右だ」と言われて同意しないのと同じではないか。

政策を離れた討論になりつつあるため、ここで司会者から制止が入る。それにも関わらず洪準杓候補がさらに食い下がるも時間切れに。次に国民の党の安哲秀(アン・チョルス、55)候補の質問。




質疑応答:安哲秀候補「学制改編はどうか」

安哲秀安哲秀

第4次産業革命においては、教育改革が必ず必要だ。劉承旼候補の教育公約は苦心の跡が見て取れた。私は中長期的に学制の改編がいると思うが、どう思うか。(編注:安候補は現行の6・3・3から5・5・2に変えると主張)

劉承旼劉承旼

安候補の学生改編には賛成しない。まず、ヨーロッパではすでに古い制度であるし、膨大な費用がかかる。その代わり、柔軟学期制と受講申請制を主張したい。

安哲秀安哲秀

これまでの66年間、12年学制の下であらゆる改革が失敗し、12年の間、大学入試だけをする制度になってしまった。この枠自体を変えなければならない。

劉承旼劉承旼

教育の内容を変える方向で変えるべきだ。

安哲秀安哲秀

もちろん内容も変える。公約を読んで欲しい。

劉承旼劉承旼

隅々まで読んだ。内容を変えると言う点には賛成だ。

劉承旼候補の政策検証討論はここまで。次は沈相奵候補の出番となる。




4月13日の討論会まとめリンクは以下の通り。

[韓国大統領選D-23]第一回テレビ討論会まとめ (1)安保、経済分野共通質問(4月16日)
http://kankoku2017.jp/archives/1701

[韓国大統領選D-21]第一回テレビ討論会まとめ (2)政策検証討論 劉承旼(4月18日)
http://kankoku2017.jp/archives/1708

[韓国大統領選D-21]第一回テレビ討論会まとめ (3)政策検証討論 沈相奵(4月18日)
http://kankoku2017.jp/archives/1718

[韓国大統領選D-21]第一回テレビ討論会まとめ (4)政策検証討論 文在寅(4月18日)
http://kankoku2017.jp/archives/1724

[韓国大統領選D-20]第一回テレビ討論会まとめ (5)政策検証討論 洪準杓(4月19日)
http://kankoku2017.jp/archives/1737

[韓国大統領選D-20]第一回テレビ討論会まとめ (6)政策検証討論 安哲秀(4月19日)
http://kankoku2017.jp/archives/1745