4月13日のテレビ討論まとめ第三弾は、正義党の沈相奵(シム・サンジョン、58)候補の政策検証討論。5人の主要候補の中で最も左寄りの政策を掲げるが、そこから見えるものも少なくない。(ソウル=徐台教)

沈相奵候補の政策プレゼンテーション「財閥経済体制を終わらせる」

沈相奵候補はまず、「今回の選挙は『ろうそく』がもたらしたものだ。(進歩派への)政権交代は確実だ。果敢な改革を通じて新しい韓国を作ろう」と切り出し、「私、沈相奵が責任を持つ」と堂々と述べた。

そして、ろうそくデモの現場で出会った、アルバイトで生計を立てる24歳の若者の「このまま20年、30年を生きて行けと言われたら無理だ」という言葉を引用し、「大統領は何よりも汗を流して働く人を生かす大統領でなければならない」と主張した。

沈相奵候補写真
正義党の沈相奵(シム・サンジョン)候補。ソウル大出身のエリートでありながら、労働運動に身を投じ、20年以上を運動の現場で過ごしてきた。今回唯一の女性候補でもある。写真は同候補のフェイスブックより引用。地下鉄労働者と握手する沈候補。

さらに「民主化以降の大統領のうち、民主政府(編注:金大中、盧武鉉政権)も、南北関係や民主主義の面では進展をもたらしたが、経済では常に既得権側に立った。韓国はひと言で財閥共和国だ。60年続いたこの体制は『革破』されなければならない。私だけができる」と並々ならない決意を示した。

特に「財閥経済体制を終わらせる。財閥3世への経営世襲を無くし、不寛容の原則で政経癒着を根絶する。大企業に対し社会的責任を強く問う」と、歴代大統領が無し得なかった果敢な政策を提示した。

また「非正規雇用の無い国家、第4次産業革命に備え果敢な社会革新を行う。労働時間も減らし、基本所得制度(ベーシック・インカム)を導入する」と明かし「韓国政府樹立以降はじめて、労働の価値を国政の第一基調とする改革政府を作る」と締めた。

個別討論:文在寅「議院内閣制に変えるのか」

続いて各候補者による個別の質疑応答が始まった。まずは共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン、64)候補から。

文在寅文在寅

基本的な政策は私とほとんど同じだ。しかし全く理解できないのが改憲の内容に議院内閣制を主張しながらも、3年6か月に任期を短縮している点だ。どういうことか?

沈相奵沈相奵

きちんと私の公約を見ていないようだ。「穏健な多党制」による協治の方向に政治を転換させるためには、内閣責任制がもっとも望ましい。しかし国会が今のように不信感を持たれている状況では難しい。

だから、議院内閣制もしくは二院執政府制などと国会に権限を移管する改憲をする際に、前提となるべきは選挙法の改定になる。選挙法の改定の無い権力構造の改編は国民にとっては詐欺になる。そう言っている。

文在寅文在寅

選挙制度だけ改編されれば、議院内閣制に変えるということか。

沈相奵沈相奵

選挙制度が変わり、民心をそのまま反映した国会になり、信頼が得られる国会になるならば積極的に検討できる。

文在寅文在寅

次の政府のうちにできると思うか?

沈相奵沈相奵

できないと言った。長期的にやる。

文在寅文在寅

労働時間の短縮による雇用の増大については賛成か。

沈相奵沈相奵

どの候補よりも積極的に推進している。

文在寅文在寅

新しい法がいると考えるか。

沈相奵沈相奵

法も法だが、労働問題においては、大統領の強力な意思が必要だ。実際に雇用労働部長官ができることは何もない。財閥の労務担当程度に過ぎない。だからこそ最優先課題にする必要がある。




質疑応答:洪準杓候補「企業を泥棒扱いするのか」

次は自由韓国党の洪準杓候補(ホン・ジュンピョ、62)候補。政策的には真逆に位置する自由韓国党の候補だ。

洪準杓洪準杓

非正規雇用を減らすことに高い関心を持っているようだが、企業にとっては労働の柔軟性確保のために非正規雇用が必要な面もある。だから、正社員を多く雇う企業には法人税を引き下げるなどの連動が必要だと思うがどうか。

沈相奵沈相奵

非正規雇用が多い理由は政経癒着のためだ。正社員として雇うために使われるべきお金が、政治に流れるから問題が解決しないと見る。

洪準杓洪準杓

それは本質的な問題ではないと見る。企業をそのように犯罪視し、泥棒扱いする場合に企業が我が国に雇用を作ると思うか?海外に出てしまうだろう。

沈相奵沈相奵

「サムスンが逮捕されれば韓国が変わる」というのは私ではなくフィナンシャル・タイムズが書いた話だ。反企業情緒をまき散らすと我々を批判するが、反企業情緒を作った真犯人は政経癒着と両極化、そして経営世襲のためのあらゆる脱法・違法行為を共に行ってきた朴槿恵前大統領のような腐敗した権力だ。

洪準杓洪準杓

たばこ税の引き下げについても検討して欲しい。ストレスでタバコを吸う庶民のサイフで国庫を潤してはならない。

質疑応答:安哲秀候補「選挙区制の改編が必要」

続いては国民の党の安哲秀(アン・チョルス、55)候補。

安哲秀安哲秀

時代精神は分権にあると見る。そのための基盤は国会が多党制になることだ。沈相奵候補のいう通り、現状の選挙制度は、両党(共に民主、自由韓国党)に極度に有利で効率の高い制度だ。このままでは両党制に回帰する危険が高い。これは歴史の流れや国民の希望とは反対だ。

このため、国会議員の選挙制度は変わるべきで、大統領決選投票制も導入されるべきだ。それが可能な場合、国会先進化法も過半数を基準とするもの(編注:現行は6割の180席の賛成が無ければ法案が成立しない)に変えるべきと思うが、どうか。

沈相奵沈相奵

選挙法改正に関しては他の二野党(国民の党、共に民主党)に不満がある。ドイツ式の政党名簿比例代表制、決選投票制は金大中大統領の時から20年になった約束だ。盧武鉉大統領も党論として採択したし、文在寅代表の時にも採択された。

しかし実践がなかった。両党体制の既得権が惜しいからだったと見ている。安候補も同様だ。前回の国会で私たち(正義党)は4か月間、選挙法の改正を求めて国会にろう城したが、安候補は何の力も貸してくれなかった。

安哲秀安哲秀

私は既得権両党体制の人間ではない。私は一貫して選挙制の改正を主張してきた。改憲の前か、改憲と同時に選挙区制の改編が必要だ。選挙区制の改編が無いまま改憲になる逆に既得権両党体制の重鎮たちに権力が集中することになるから、これは有り得ないということだ。

沈相奵沈相奵

その点に関しては完全に共感する。

安哲秀安哲秀

国会先進化法についてはどうするつもりか。

沈相奵沈相奵

前回の19代国会(2012年5月~2016年5月)でも取り上げた。19代で運用してみて、20代で変えようという話があるので、わが党で準備している。協力してほしい。

安哲秀安哲秀

望ましい選挙制度は何だと思うか?

沈相奵沈相奵

ドイツ式の政党名簿比例代表制を導入し、民心がそのまま議席数に反映されるようにしなければならない。実際にそうだったら、わが政党も前回の総選挙(2016年4月)に21議席を獲得し、院内交渉権を獲得していたはずだ。




質疑応答:劉承旼候補「安保認識が心配」

続いては正しい政党の劉承旼(ユ・スンミン、59)候補。

劉承旼劉承旼

沈相奵候補の発言のうち、中大選挙区制に賛成する。また、老翁改革、財閥改革に対する合理的な主張に対してもオープンな気持ちで受け入れる。

ただ、過去に民主労働党から正義党にいたるまで、北朝鮮問題についてシム候補をはじめ正義党の方は整理をして出てきたと知っている、だが実際、沈相奵候補に心配なのは、THAAD(高高度ミサイル防衛システム)配備などの安全保障問題だ。なぜTHAAD導入に反対なのか?

沈相奵沈相奵

この5人の大統領候補の中で私だけがTHAADに反対している。

劉承旼劉承旼

違う。文在寅候補と安哲秀候補はずっと反対してきたが、ここ数日態度が変わっている(編注:13日の時点で文在寅候補は「次期政府が決める」と主張し、安哲秀候補は「配備に賛成」であった)。

沈相奵沈相奵

文在寅候補はほとんど首まで浸かっている状態だ。票のためとはいえ立場を変えることはできない。私が黙ると真実を語る人がいなくなる。THAADで北の核を防げないというのは周知の事実だ。このTHAADにより朝鮮半島が強大国の角逐戦に変わる状況を放置してはいけないという想いだ。

私の主張は、THAADに対して包括的な安全保障影響評価が行われなければならず、それ結果を見て再度判断すべきと言いうこと。主権国家は国益を評価し、判断するための民主的な手続きを経なければならない。それをしようというのが、なぜ反米になるのか。劉承旼候補のTHAAD万能論は安全保障に役に立たないと思う。

劉承旼劉承旼

THAAD万能論ではない。

沈相奵沈相奵

万能と受け止めているように見える。THAADでどうやって北の核を防ぐのか。

劉承旼劉承旼

北が核弾頭を多くのミサイルに装着し発射した場合に、何発だけでもTHAADで防げれば、それだけ国民の生命を守ることになる。私はTHAADが北朝鮮核問題を解決すると主張したことはない。

北が核を実戦配備するところまで来たから言っている、正義党はなぜこの問題を正確に理解できていないのか。

沈相奵沈相奵

われわれは確固とした安保観を持っている。一番危険なのはこれまでの保守政治勢力が主張してきた安保第一主義だ。これは偽の安保だ。票のために安保を利用するのは最も危険な安保と言いたい。

劉承旼劉承旼

その点については同意する。とにかくTHAADについては再考をうながしたい。




沈相奵候補の政策検証討論はここまで。文在寅候補の政策検証討論に続く。

4月13日の討論会まとめリンクは以下の通り。

[韓国大統領選D-23]第一回テレビ討論会まとめ (1)安保、経済分野共通質問(4月16日)
http://kankoku2017.jp/archives/1701

[韓国大統領選D-21]第一回テレビ討論会まとめ (2)政策検証討論 劉承旼(4月18日)
http://kankoku2017.jp/archives/1708

[韓国大統領選D-21]第一回テレビ討論会まとめ (3)政策検証討論 沈相奵(4月18日)
http://kankoku2017.jp/archives/1718

[韓国大統領選D-21]第一回テレビ討論会まとめ (4)政策検証討論 文在寅(4月18日)
http://kankoku2017.jp/archives/1724

[韓国大統領選D-20]第一回テレビ討論会まとめ (5)政策検証討論 洪準杓(4月19日)
http://kankoku2017.jp/archives/1737

[韓国大統領選D-20]第一回テレビ討論会まとめ (6)政策検証討論 安哲秀(4月19日)
http://kankoku2017.jp/archives/1745