4月初旬に猛烈な追い上げで文在寅候補との「二強」の争いへと持ち込んだ国民の党・安哲秀候補。だがここに来て支持率低下に悩んでいる。残り二週間、起死回生の目はあるのか?選対関係者は自信を持って「ある」と答えた。(ソウル=徐台教)

第三回テレビ討論会はどの候補者も低調

4月23日夜に行われた大統領選有力候補者5人によるテレビ討論会。都合三度目となるこの日の討論は、候補者間の非難合戦の様相を呈し、建設的な議論を期待した有権者の想いを裏切るものだった。

第三回テレビ討論会写真
4月23日に行われた三度目のテレビ討論会。左から劉承旼、安哲秀、洪準杓、文在寅、沈相奵各候補。共に民主党HPより引用。

一例を挙げると、冒頭でまず、正義党の沈相奵(シム・サンジョン、58)候補が、大学時代に友人の婦女暴行未遂に協力した疑いを持たれている自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ、62)候補に対し「今日は洪候補と話をしない」と突き放した。

さらに正しい政党の劉承旼(ユ・スンミン、59)候補は洪候補に対し大統領候補の辞退を公然を求め、安哲秀(アン・チョルス、55)候補もこれに同調する異例の事態となった。

また、劉承旼候補は共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン、64)候補に対し、過去二回の討論会と同様、本紙でも詳報した「2007年北朝鮮国連人権決議案問題」を執拗に追求した。

リンク:[韓国大統領選D-16]各候補を襲う試練 (1)文在寅候補に「北寄り」批判再燃、「偽証」の指摘も(4月23日)

この日の討論は結局、 個人的な疑惑の追及・解明や、過去2回の討論会で繰り返し語られた内容の焼き直しなど、本来の主題であった「外交、安全保障、対北朝鮮政策」そして「権力機関および政治改革方案」とは遠く離れた内容が大部分を占めたのだった。




安候補「私がMBのアバターですか?」

中でもとりわけ話題を集めたのが、安哲秀候補が文在寅候補に対し聞いた「私はMBのアバターですか?」というひと言だった。

これは、SNS上で安候補について回る「MB(李明博、イ・ミョンバク元大統領)のアバター(分身)」という噂の出どころが共に民主党にあることを同党の文書から確認した安候補が、文候補に直談判したものだ。対話を再現する。

安哲秀安哲秀

私がMBのアバターですか?

文在寅文在寅

巷にはそういう話もあります。

安哲秀安哲秀

文候補の考えを聞いています。私はアバターですか?

文在寅文在寅

それが私の考えです。(編注:あくまで噂であるということ)

安哲秀安哲秀

そうですか。

文在寅文在寅

私は先ほど安候補が言ったことをこれまで一度も口にしたことはありません。噂をもって質問するので私は答えようがありません。

安哲秀安哲秀

私は先の大統領選挙の際(2012年)に候補を譲りました。これ以上、李明博(イ・ミョンバク)政権が延長されてはならないと思い決心しました。文候補も同じようなことを私に話されました。それなのに「MBのアバター」ですか?

文在寅文在寅

(強い口調で)安哲秀候補、違ければ違うと自分自身で否定すればよいでしょう。それだけでなく、安候補の夫人に関する疑惑も国会の常任委員会を開いて解明したいのなら解明してください。私、文在寅を見てするのではなく、国民に向かってそうしてください。文在寅を反対するために政治をしているのですか?

(安哲秀候補が2011年にソウル大学融合科学技術大学院院長に就く際、夫人の金美暻(キム・ミギョン)KAIST教授も共にソウル大学の教授に就任した。この際、安哲秀氏の意向が強くはたらいたという疑惑)

安哲秀安哲秀

ということは、「MBのアバター」ではないと確認してくれるということですね?

文在寅文在寅

はっはっは、ええ、私はそうは思いません。

この一連の安哲秀候補の話法について、ネットを中心に「失敗」との評価が多かった。特に「MBのアバター」というSNSを中心に広まっているに過ぎない単語を、全国中継で安候補本人が口にしたことにより、視聴者の耳に強く印象付けてしまう逆効果となったのだった。


120万人のフォロワーを持つソウル大学法科専門大学院の曺国(チョ・グク)教授のツイート。「安哲秀の『私がMBのアバターですか』『私が甲哲秀ですか』。誰が用意したのか分からないが、政治的に最悪の質問だ。文在寅の否定する回答にも関わらず、視聴者の記憶には「MBアバター」「甲哲秀」という単語だけ残ることになる」

同じく曺教授。「選挙で候補者が競争者に対し、自分が何者であるか聞く行為は、意図に関わらず競争者に『認証』を求める行為に映り、競争者に『権威』を与えることになる」

じりじりと減る支持率、ついには文候補と10%以上の差に

世論調査によると安哲秀候補の支持率はじりじりと下がり続けている。直近の調査7つと、約二週間前の調査5つを比べると以下のようになる。

韓国大統領選世論調査推移グラフ
直近の世論調査結果をまとめた表。安哲秀候補の支持率が下がり続けているのが分かる。25日夜に発表されたものでは、その差が14%に広がった。本紙作成

支持率が下がった理由を、韓国メディアは文在寅候補との比較などを通じ様々な角度から分析している。いくつか抜粋してみる。

(1)政策広報の失敗:文在寅候補は「文在寅一番街」などのサイトを通じ政策の売り出しに成功した一方、安哲秀候補の公約を知るにはホームページで固い文章を読まなければならない。(作家:柳時敏ユ・シミン)

(2)候補者の検証の結果:「二強」構造になったことで、候補者と周囲の人物の検証が始まったが、安候補が予備軍訓練に行かなかったこと、夫人の金美暻教授が国会議員である安候補の補佐陣に私的な用事をさせていたことなどで、「反則をせずに成功し、成功しても特権を振り回さない」イメージが低下(同。該当記事 http://www.sisaweek.com/news/articleView.html?idxno=90206

(3)中道、保守層に安心を与えられなかった:安候補の支持率急上昇を支えたのは「文在寅より安定している」という期待だった。1回目のテレビ討論(4月13日)、2回目のテレビ討論(4月19日)でも頭角を現すことができなかった。(韓国経済、イ・ジェチャン記者。該当記事 http://www.hankyung.com/election2017/newsview.php?aid=201704218022i

(4)洪準杓候補の突き上げ:保守層が安候補を支持する理由は「反文在寅情緒」であり、結集力は弱い。保守層にとって安候補は「最善」でも「次善」でもない「最悪を避けるための次悪」の選択だった。だが、前与党の自由韓国党・洪準杓候補が反左派という明確な支持層の結集を図ることで、行き場を失い安候補に流れていた保守層が洪候補に「戻った」。(同上)

(5)保守(右)票へのアピール過多による連鎖反応:安全保障問題における強硬な態度を通じ保守票を取り込みを図ったが、元々の基盤であった左派層が圧倒的に強い湖南地域での(光州市、全羅南北道)支持率が低下した。また、湖南の支持率が下がることで魅力の一つであった、当選可能性が下がり、TK(大邱、慶尚北道)地域の支持者が減った。(筆者)

なお、安哲秀候補の主要な支持層は、全国2000人の調査と規模が最も大きい中央日報の調査を参考にすると、50代(40.1%)、60代以上(37.3%)でそれぞれ1位となっている。地域ではTK(大邱、慶尚北道)地域でのみ1位(31.0%)で、あとはすべて2位で文在寅候補の後塵を拝している。

特に19歳~29歳では文在寅候補47.1%に対し21.8%、30~39歳では同56.7%に対し18.5%と大幅に水をあけられており、テコ入れが急務だ。




次ページ:安哲秀候補 選対本部関係者インタビュー