29日、ソウル市内で通算23回目となる「ろうそくデモ」が開かれた。参加した市民はろうそくの「原点」と「行き先」を確認し合った。(ソウル=徐台教)

「社会を変えるのは大統領ではない」

二週間ぶりにろうそくの灯りが光化門広場にともった。23回目となる今回のろうそくデモは「広場の警告!ろうそくの民心を聞け」というテーマで午後7時から行われた。

ろうそくデモウェブバナー
23回目の「ろうそくデモ」のウェブバナー。下段部には「朝鮮半島の平和」、「非正規雇用の撤廃」、「セウォル号真相解明」、「THAAD配置阻止」、「白南基(ペク・ナムギ)農民への国家暴力責任者処罰」、「不正財閥総帥逮捕」、「差別禁止法制定」、「最低時給1万ウォン(約1000円)」などの目標が掲げられている。朴槿恵政権退陣非常国民行動HPより引用。

この日は5人がいずれも、今回の大統領選挙の過程で話題になっているテーマについて演説した。

まずマイクを握った民主労総(全国民主労働組合総連盟)のチェ・ジョンジン委員長代行は「春が来たのに、春を感じることができずもどかしい。1700万人の『ろうそく革命』が成し遂げた早期大統領選挙であるにも関わらず、ろうそくの民心は消え去り、権力争いだけが続いている」と不満を露わにした。

さらに同じ光化門のビルの屋上でろう城を続ける6人の労働者に言及し「憲法で保障する労組を作ったという理由で解雇された非正規雇用の労働者たちです。それだけの理由で一瞬にして解雇される国が正常と言えますか?」と主張し、「こういう国を変えようとろうそくを掲げたのでは無かったのですか?」と声を高くした。

光化門ろう城闘争写真1
光化門十字路のある世光ビルの屋上で、4月14日から6人の労働者が無期限断食闘争を行っている。労組を作ったかどで解雇されたり、正社員への転換を拒否され解雇された非正規雇用の労働者たちだ。4月15日本紙撮影。
光化門ろう城闘争写真2
高さ40メートルの屋上には、有名なサムスン電子の広告スペースがある。断食闘争を行う労働者たちはここに、横断幕を掲げている。横断幕には「整理解雇・非正規雇用労働悪法撤回!・労働法前面制・改定!・労働三権完全奪取」とある。4月15日本紙撮影。

続けて、「私たちの生活が変わってこそ真の『ろうそく革命』で、そのための大統領選挙にならなければなりません。ろうそくが弱くなり消えれば、世の中はまた逆方向に進みます。社会を変えるのは立派な大統領でも金バッジを付けた国会議員でもなく、1700万人のろうそくの主人公である私たちです」と、昨年10月から続く「政治参加」を続けていくよう求めた。




「THAADの真実を明らかに」

次はTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)が導入された慶尚北道星州(ソンジュ)郡で反対運動を続ける、円仏教のカン・ヘユン氏教務が現地の様子を伝えた。

THAAD反対運動
この日のろうそくデモの最大のテーマの一つがTHAADであった。反対する団体が「違法THAAD 完全無効」を掲げ、署名運動を行っている。4月29日筆者撮影。

「4月26日未明、米軍と韓国軍がTHAADの装備一式を運び込む過程でには1万人の軍と警察が動員され」、「抗議行動を行う70,80代の老人たちの髪をつかみ引きずる」などの強硬な排除を行ったと報告した。

さらに「現地で起きている凄惨な事情を知らせるために、光化門で無期限の断食闘争に入った」ことを宣言した。また「韓国側はここまで無理をしながらTHAADを導入する理由は何なのか、これを必ず明らかにし、罪を問う」と今後の目標を掲げ同調を呼びかけた。

「洪準杓候補は積弊中の積弊」

続いて演説を行ったのは、全国女性連帯のチェ・ジンミ代表。自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ、62)候補に対し「許すことができない」と語気を強めた。

洪準杓候補候補は2005年に出版したエッセイで「大学生当時の下宿生のルームメイトが、片思いの女性をものにしようと助けを求めてきたので、『豚の発情促進剤』を手に入れて渡した。結局、友人は『未遂』に終わった」という要旨の文章を書いたことがメディアに取り上げられ、「強姦事件の共犯者だ」として連日、世間の強い批判を浴びた。

これを受け、正義党の沈相奵(シム・サンジョン、58)候補は4月23日のテレビ討論会で「洪候補とは話をしない」とし、同じ場で正しい政党の劉承旼(ユ・スンミン、59)候補と、国民の党の安哲秀(アン・チョルス、55)候補も洪候補に出馬辞退を求めた。

だが、洪候補は最新の世論調査では2位の安哲秀候補と僅差の3位につけるなど、選挙戦を続けている。チェ氏は「大統領は国民の意思に従い、国民のために働くものだ。女性の人権すら認めることのできない候補に何を期待できるというのですか?」と鋭く非難した。

大統領候補支持率。
REALMETER社が4月30日に発表した世論調査の結果。文在寅候補が42.6%、安哲秀候補が20.9%とダブルスコアとなっている。3位の洪準杓候補は16.7%と目標の15%を超えた。沈相奵候補は7.6%と高止まりも、劉承旼候補は5.2%と少し下げた。

さらに「共感能力ゼロ、学習能力ゼロの朴槿恵大統領を追い出したいくらも経たないうちに、積弊の中の積弊が再び、権力に対する貪欲さを露わにしている。5月の大統領選挙を指して『バラ選挙』というが、あくまでも『ろうそく選挙』であらねばならない」と、今一度ろうそくを強調し「積弊を清算し、力を合わせ新たな社会を建設していきましょう」と締めた。

また、次に発言した「参与連帯」議政監視センターチームでチーム長を務めるイ・ソンミ氏は、この日のろうそくデモに対し、「中央選挙管理委員会が演説もダメ、集会もダメ、印刷物もダメと制約を強いた」とし、これを「過剰取締り」と指摘した。

さらに「選挙管理委員会は有権者の口を塞ぐのではなく、国家機関の介入を監視するように」との皮肉を投げかけた。




「性的少数者の人権を保障せよ」

最後に壇上に立ったのは、「行動する性的少数者人権連帯」のナム・ウン氏。「性的少数者の問題がこんなに注目されたことが無かったように思える」と切り出した。

行動する性的少数者人権連帯
壇上で演説する「行動する性的少数者人権連帯」のナム・ウン氏。同性愛について文在寅候補が「反対」を、洪準杓候補が「厳罰」を主張する中、性的少数者の人権について語った。4月29日筆者撮影。

そして「今日、この場で発言することについて心配する人も多くいたと聞きました。しかし、今言わなければいけない話があります」と続けた。

去る4月25日の大統領候補によるテレビ討論会で、文在寅候補と洪準杓候補のあいだでの以下のやり取りがあった。

洪準杓:軍隊内の同性愛は国防の戦力を弱体化させるが、これについてどう思うか?

文在寅:そう思う。

洪準杓:同性愛に反対するのか?

文在寅:反対する。

洪準杓:共に民主党から(性的少数者)差別禁止法が出ているが…

文在寅:合法化と差別禁止を区分できないのか?

洪準杓:そうではなく…同性愛については反対するということか?

文在寅:私は好きではない。

洪準杓:好き嫌いではなく反対か賛成かを聞いている。

文在寅:合法化には賛成しない。

「同性愛に反対」という文候補の発言は左派の大統領候補のものとしては異例であり、社会に衝撃を持って受け止められた。これにより支持率が5%ほど低下したとされるほどだった。

27日、文候補は「同性愛の反対はあくまで軍隊内でのこと」と釈明し「性的少数者の要求から見ると、私の発言が不足しているものに見えるかもしれない。しかし、社会全体の人権水準が重要で、現実的な判断がいる」とした。

一方、洪準杓候補は27日「同性愛は道理に反することなので、法的な禁止にとどまらず、厳罰に処さなければならない」と主張した。

こうした事情から、ナム氏の発言は非常に注目を集めた。

行動する性的少数者人権連帯
「行動する性的少数者人権連帯」(左)と「性的少数者父母会」(右)の旗。4月29日筆者撮影。

同氏は「家族とテレビ討論会を視聴している時にこの場面になり、家族が同性愛者を悪く言う姿を見ながら、性的少数者の私は根元から崩れるような気持ちでした」と明かし、「今、無辜の兵士が同性愛者だという理由だけで拘束、監禁され、数十人の同性愛者の兵士が陸軍参謀総長の命令の下、捜査の標的となっている事実を知っていますか」と市民に語りかけた。

また「嫌悪は差別を生みます。それにも関わらず性的少数者の権利は『時期尚早』と言われ、合意が必要だと言われます。そうして20年のあいだ、差別と嫌悪を耐えながら生きてきました。その間、政府と大統領、政治家たちはどんな努力をしてきましたか。漠然とした未来を約束するのではなく、今すぐ私たちの要求を聞いてください」と訴えた。

さらに「支持率が必要な人々は、政治工学を優先するため、(性的少数者への)嫌悪を小さな問題と捉えます。差別禁止法があったなら、(前出の)ああした発言は無かったでしょう」とし、「人権は命です。性的少数者の人権は、差別され排除されるすべての尊厳と普遍的な人権の価値につながります」と主張した。




「ろうそく市民」の想いは届くか

その後、参加者は黄教安(ファン・ギョアン)大統領代行のいる、総理公館への行進を始めた。その前に司会者はこう叫んだ。「大統領選が終わってから、勝利の集会で会いましょう!」

たくさんの市民が口を揃えるように、今回の大統領選挙は、昨年10月から20週にわたって雨の日も雪の日もろうそくを灯し続けてきた市民が実現した選挙だ。

ろうそくデモ0429
司会者のコールに合わせろうそくを高く掲げる市民たち。4月29日筆者撮影。

市民の想いは「どの大統領」よりも「どんな大統領」にある。

そして、大統領にすべて任せるのではなく、自らの手で今後も政治参加を続けていく意欲に衰えは見られない。

運命の投票まであと9日、「ろうそく市民」は朴槿恵大統領弾劾に続き、祝杯を挙げることができるだろうか。

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