投票日まで一週間を切り、いよいよ大詰めの韓国大統領選挙。世論調査結果の発表が禁止され、各候補のあいだで足を止めた乱打戦が始まる中、選挙後を見据えた動きも活発化している。情勢をまとめた。(ソウル=徐台教)

3日以降の世論調査結果の公表は禁止 文在寅候補の優位続く

公職選挙法の規定により、5月3日から5月9日の投票日まで、世論調査の結果を発表することが禁止される。有権者が投票先を決める際に、世論調査から影響を受け過ぎないようにするための措置だ。

なお、5月2日まで行われた世論調査の結果は、投票日まで繰り返し発表または報道できる。

この措置を受け、2日夜までに各社では相次いで最新の世論調査結果を発表した。5月1日、2日で発表された結果は15にのぼる。また、激戦選挙区の動向を調査したものも3つある。一覧にまとめる。

韓国大統領選世論調査結果まとめ図
5月3日午前7時現在の世論調査結果まとめ。似たような数値を示している。本紙作成。

まだまだ駆け込みの調査結果が発表されるものと見られるが、今の時点で世論調査の動向から読み取れるのは、おおむね以下の5つほどだ。

(1)文在寅候補の優位:共に民主党・文在寅(ムン・ジェイン、64)候補が、あらゆる世論調査で約40%の支持率で1位となっている。2位の国民の党・安哲秀(アン・チョルス、55)が4月初旬よりもかなり支持率を落としていることもあり、結果として独走態勢となっている。

(2)積極的な投票意思:詳細が公開されている世論調査結果を見ると、「必ず投票する」という層がかなり厚いことが分かる。89.2%(1日、世界日報)、94.2%(1日、MEDIA TODAY)、88.4%(1日、ネイル新聞)、88.0%(1日、アジア経済)、90.7%(1日、韓国ギャラップ)など90%前後となっており、韓国の有権者の高い意欲を示している。

(3)浮動層多数:1日に発表されたネイル新聞の調査では、「投票先をまだ決めていない」回答者が29.9%にのぼった。さらに、同じく1日発表のEBSの調査では「今後支持する候補を変える気がある」と答えた回答者が27.5%に、同じく韓国ギャラップの調査では「他の支持者に変えるかもしれない」とした回答者が29.5%にのぼった。

(4)沈相奵候補の躍進:正義党・沈相奵(シム・サンジョン、58)候補は4月初旬に比べ平均で5~6%程度支持率を伸ばした。「普段は3%」(同党幹部)の支持率が急騰した理由は、5度にわたるテレビ討論会での印象が影響している。また、特定の地域に偏らず、全国で均等に支持を得ているのも特徴だ。

(5)くすぶる安哲秀候補:4月初旬の勢いがしぼんでいる。原因はやはり、テレビ討論会での不振が挙げられる。調査によっては3位に転落しているものもある。しかし、1日のネイル新聞の調査では全体の29.9%におよぶ「投票先を決めていない」回答者のうち、安候補が24.2%で1位の支持を集めるなど、潜在的な選択肢としてはまだ高い存在感を示している。

他に興味深い内容としては、1日発表のクッキーニュース(国民日報)の調査のうち「候補を選ぶ基準」という項目で、「個人の資質」を選んだ回答者が49.5%にのぼり、2位の「政策」14%を大幅に上回ったという点などがある。

文在寅写真
共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)候補。4月27日筆者撮影。

地域別の世論調査でも文候補が優位

次に韓国の政治を語る上で重要な地域での世論調査結果を見てみたい。

地域別世論調査
特定の地域を対象に行われた世論調査の結果。偏りは以前よりも減ったとされるが、湖南ではそうでもない。各調査結果を参照し本紙作成。

(1)釜山市:保守勢力が強く、2012年の大統領選で59.8%が朴槿恵(パク・クネ)候補に投票した釜山市では、文在寅候補が抜け出ている。地元である点も作用している。実は安哲秀候補の故郷でもあるが、人気は高くない。

(2)慶尚南道:やはり保守層の強いこの地域であるが、野党候補の健闘が目立つ。前回の大統領選では63.1%が朴槿恵候補に投票している。2012年末から今年4月まで道知事を務めた自由韓国党・洪準杓(ホン・ジュンピョ、62)候補だが、思ったより伸びを見せていない。

(3)光州、全羅南北道:湖南(ホナム)地域と総称される野党の心臓部では、昨年の総選挙でこぞって支持した国民の党・安哲秀候補でなく、文在寅候補が大きく支持を集めている。だが、安候補陣営はこの調査結果に疑問を抱いている(後述)。洪準杓候補の支持率はわずか1%と、地域感情は依然としている。前回の大統領選では約90%が文在寅候補に投票した。

(4)大邱、慶尚北道:頭文字からTKと呼ばれる。保守の牙城であるこの地域では、洪準杓候補が1位となっている。だが、前回の大統領選では大邱80.1%、慶尚北道80.8%が朴槿恵候補に投票したことを考えると、風向きは大きく変わっている。

なお、光州・全羅南北道で「今後候補者を変える可能性がある」と答えた回答者は22.3%だった。また、大邱市・慶尚北道地域で同様の選択をした回答者は、文在寅候補を支持層の21.1%に比べ、安哲秀候補の場合は42.9%と、高い傾向が見られた。安候補支持層の一部が浮動層であることを示している。

これら特徴ある地域では特に、湖南地域の影響が大きいとされる。湖南で支持を多く集める方に大邱・慶尚南北道の浮動層の票が集まるとされ、文在寅候補と安哲秀候補の激しい争いが続いている。




正しい政党の議員12人が自由韓国党へ

見てきたようなメディアによる世論調査よりも、各政党では独自の世論調査をアテにしている。内容は公開されないが、地域・対象ごとに細分化した調査を行い、地域での選挙活動の「感触」と共に選挙戦略を立てる際の材料としている。

選挙では上昇気流に乗った候補に勢いがあるのが常だ。今、もっとも勢いがあるのが洪準杓候補だ。フェイスブックやインタビュー、演説など場所を問わず「二強体制になった」、「逆転で勝てる」と公言してはばからない。世論調査の結果にも否定的で「大統領になったら世論調査を禁止する」ともぶち上げている。

洪準杓写真
自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)候補。「洪トランプ」の異名を取る。3月31日筆者撮影。

このような、洪候補独特の歯に布を着せない発言をはじめとする「ストロングマン」の個性とも相まって、朴槿恵前大統領の弾劾、罷免、逮捕により散り散りになったと思われていた保守層の結集を進めており、20%前後の支持率にも関わらず強い存在感を持っている。

洪候補の勢いに押されたのが、正しい政党の一部議員だ。32人の議員のうち14人が5月1日深夜、洪準杓候補と会談を行い、翌2日には同候補の支持を表明、うち12人が正しい政党を離党した。

表向きの理由は「保守の大統合」であるが、洪候補の下への保守層の結集が可視化している上に、正しい政党の大統領候補である劉承旼(ユ・スンミン、59)議員の支持率が上がらないことから見切りをつけたかたちだ。

劉承旼写真
正しい政党の劉承旼(ユ・スンミン)候補。「温かい保守」を掲げる。社会的な評価は低くないが、人気は低空飛行が続く。同氏選対本部フェイスブックより引用。

ただ、自由韓国党側も「裏切り者」に対し、しかるべき手順を踏んで「復党」させるものと見られる。具体的には明らかになっていないが、謝罪などを要求する可能性もある。




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