共に民主党と正義党のせめぎ合い

洪準杓候補発の「保守結集」の勢いに押されるかたちで、進歩陣営の動きも慌ただしい。

複数の韓国メディアによると、共に民主党の禹相虎(ウ・サンホ)院内代表は2日、記者懇談会の席で「正義党に対する支持は次の選挙でしてもいいのでは」と語った。

また、「今回は政権交代に集中するのが時代精神に合うもの」とも述べ、「文候補の支持率が35~40%にとどまっており、これ以上の上昇は容易でない。何があるか分からないので文候補に絶対的な支持を送ってほしい」とした。

さらに「今の世論調査では楽観できない。文候補の当選が確実と見られ、遊びに行ったり(投票率の低下)や好きな進歩派候補(沈相奵候補を指す)に投票しようという流れを警戒する必要がある」と強調した。(会話部分はすべてハフポスト http://www.huffingtonpost.kr/2017/05/02/story_n_16378218.html より引用)

沈相奵写真
正義党の沈相奵(シム・サンジョン)候補。抱擁を求める際に涙するなど、青年層の支持が厚い。5月1日筆者撮影。

これに怒ったのが正義党だ。すぐに正式な声明を出し「共に民主党による正義党へのけん制」を正面から非難した。一部を引用する。

「共に民主党の禹相虎院内代表の発言は、きわめて不適切な発言で遺憾だ。沈相奵候補の支持率上昇は、文在寅候補の支持率とは関連が少ない。これまでの世論調査の推移を見るに、沈候補への支持は政治に距離を置いていた20代の青年、無党派層と把握できる。共に民主党がこれまで受け止められなかった層が正義党を注目している。

共に民主党は正義党が進歩政治の地平を広げている事実を認め、これを歓迎すべきなのに、不必要な葛藤を誘発することは、責任のある言動ではない。ろうそくの民心は政権交代の熱望だけでなく、根本的な改革も望んでいる。国民の一票に死票はない。

正義党は共に民主党と正々堂々競争している。沈相奵候補は政策とビジョンをもって国民の生活の変化を話している。民主党は「圧倒的な勝利論」や「死票論」のような古い方式の選挙に頼ってはならない。それでは新しい韓国を開くことができない」




正義党関係者「今回の選挙は所信投票」「沈候補の辞退はない」

こうした状況をどう捉えるべきか。正義党の林辰洙(イム・ジンス)対外協力委員長は筆者のインタビューに対し、以下のように答えた。

「共に民主党からは何の申し出も無かったし、これからも無いだろう。世論調査期間が終わったため、これからは少しでも自陣営の票を増やそうと『支持率50%必要論』や『保守脅威論』などを振りかざしてくるだろう。わざと『労働部長官などのポストを用意している』のような内容をメディアやSNSに流すかもしれない。選挙戦とはそういうものだ。

今回の選挙は保守と進歩に分かれたこれまでの選挙と異なり、5人の候補にそれぞれの支持層がいる。投票も(当選の可否に関わらず)自身が支持する候補に入れる『所信投票』のかたちで行われるだろう。正義党の支持者は民主党のそれとは異なる点を強調したい」。

また、沈相奵候補の辞退はあるのかという質問には「沈候補自身が何度も『ない』と言っている。それがすべてだ」と語気を強めた。

国民の党は独自分析「文、安候補は肉迫」「安候補の勝利は決定的」

こうした周囲の喧騒とは一歩離れたところで、国民の党も声を高めて主張していることがある。それは「世論調査と現実との差」についてだ。

安哲秀写真
国民の党の安哲秀(アン・チョルス)候補。伸び悩むも同陣営は勝利を確信している様子だ。4月6日筆者撮影。

5月2日、同党のキム・ヨンファンメディア本部長はソウル汝矣島(ヨイド)の国民の党党舎で記者会見を行い世論調査の分析を行った。

まず「今回の大統領選挙は世論調査の予測は不可能」とし、根拠として「5月2日付けの中央日報の調査でも『支持候補を決めていない』と答えたのは24.8%、『支持候補を変えられる』と答えたのは24.7%と、50%に近い票が揺れ動いている」点を挙げ、「最後まで分からない」と強調した。

また、「文在寅候補の積極的支持層が多く回答している」、「安価な世論調査が横行し、信頼度が低い」など世論調査が抱える問題点を広い範囲で指摘した。

さらに「今回の選挙は安哲秀、文在寅、洪準杓が90%の票を取り合う構図になる。当落は35~40%のあいだで決まる」と見通し、同党独自の調査結果に、世論調査の誤りを修正した結果を合わせると「文在寅候補は30%もしくはそれ未満、安哲秀候補は30%に肉迫しているか、それ以上になる」という分析を示した。

その上で、「最近の洪準杓候補の大統領候補として不適切な態度に対する抵抗感、さらに文在寅候補が当選した際に、保守層と進歩層のあいだで5年間続くであろう争いへの疲労感」などから「安哲秀候補の当選は決定的だ」と結論を下している。




「暗やみ選挙」に突入

韓国メディアでは、世論調査という「有権者にとっての指針」がないこれからの6日間を「暗やみ選挙」と表現している。

主要5候補
5月2日夜、6度目のテレビ討論会に臨む主要5候補。投票前最後の討論会となった。討論会の内容は別途まとめる。共に民主党HPより引用。

SNS上にはびこるフェイクニュース、メディアの過剰報道などが、少なくとも全体の30%におよぶ浮動票の行き先に影響を与える可能性もある。

文在寅候補の当選が有力視されているのが現状だが、これまで見てきたような事情から予断を許さない。

ろうそくデモから始まった早期大統領選がどんな結末を迎えるのか。

誰が当選しても混乱が予想される今後の政界の見通しとも相まり、韓国の有権者には気の休まらないゴールデンウイークが続くことになる。