5月4日、5日にわたり行われた事前投票で、全体の有権者の4分の1以上が投票したことが分かった。中央選管が発表したデータを中心に今後を見通した。(ソウル=徐台教)

3度目の事前投票で過去最高を記録

韓国の中央選挙管理委員会は5日夜に「事前投票に有権者全体の4,247万9,710人のうち、1,107万2,310人が参加し、歴代最高となる26.06%を記録した」と発表した。

もともと事前投票制度は、複雑な不在者投票制度を改めるために導入された。

事前に不在者登録を行い、郵送された投票用紙を持って指定された投票所に行かなければならない制度を、2013年以降「有権者であれば、全国どこででも事前に投票できる」ように改善したものだ。

事前投票バナー
事前投票を知らせるウェブバナー。人気アニメのキャラクターが方法と日時を知らせる。中央選管HPより引用。

有権者は身分証明書一つで、全国に設置されるあらゆる事前投票所で投票することができる。

この便利な制度は、2014年6月4日の第6回全国同時地方選挙ではじめて実施された。当時も5月30日、31日の2日間にわたり、11.49%という高い投票率を記録した。

2012年12月19日の第18代大統領選挙(当選者・朴槿恵)当時、不在者登録を行った有権者が2.4%に過ぎなかった点と比べると、多数の有権者を投票所に向かわせたと推測することができるものだ。

さらに、昨年4月13日に行われた第20代国会議員選挙(総選挙)においても事前投票は2日間にわたり行われた。12.2%の投票率を記録したことで完全に制度として定着した。

今回の第19代大統領選では、全国で3,507か所の事前投票所が設置され、冒頭で述べたように、昨年の総選挙の倍以上となる26.06%の有権者が投票した。なお、5月9日の本投票では、指定された投票所でしか投票できない。




最終的な投票率は「80%超え」か 最高値更新の可能性も

韓国メディア各紙は、事前投票率が高かった理由を「6日~9日という残りの連休を気楽に過ごすため」(連合ニュース)や、「朴槿恵大統領を弾劾し行う『ろうそく大統領選』であるため、怒る有権者たちの足が事前投票に向かっている」(ハンギョレ)、「朴槿恵大統領弾劾後、国民の政治に対する高い関心による」(東亜日報)など、様々に分析している。

気になるのは、最終的な投票率がどの程度まで伸びるかだが、これについては楽観的な見方が強い。

文在寅事前投票
自身の番号である候補1番を示す親指を立て、事前投票を呼び掛けるパフォーマンスを行う文在寅候補。共に民主党HPより引用。

中央選管が5月4日に発表した、有権者1500人を対象に独自に行った世論調査結果によると「大統領選挙に関心がある」と答えた回答者は全体で92.4%にのぼる。その上で「必ず投票する」とした回答者は86.9%と高い数値を示した。

5年前の第18代大統領選挙の際に行われた同様の調査結果が79.9%であり、実際の投票率が75.84%であったことを考えると、今回の大統領選の投票率は80%を超えると予想される。

各紙世論調査でも「必ず投票する」と答えた有権者が89.2%(1日、世界日報)、94.2%(1日、MEDIA TODAY)、88.4%(1日、ネイル新聞)、88.0%(1日、アジア経済)、90.7%(1日、韓国ギャラップ)などおおむね90%前後となっている。

大統領直接選挙が始まった直後である、87年の第13代大統領選の投票率89.2%を更新するかが注目される。

地域別では湖南地域が積極的 嶺南地域は低調

事前投票の結果は、地域別のみ発表される。最も高かったのは世宗(セジョン)特別市の34.48%、全羅南道が34.04%、光州広域市が33.67%、全羅北道が31.64%と、湖南(ホナム)地域が後に上位を占めた。

逆に投票率が低かったのは、大邱(テグ)広域市の22.28%、済州島の22.43%、釜山(プサン)広域市で23.19%の順だった。

洪準杓写真
5日、ソウル市内の永登蒲駅前で演説する洪準杓候補。数百人の支持者がつめかけ大声援を送った。筆者撮影。

人口を多く抱える首都圏ではソウル26.09%、京畿道24.92%と、ほぼ平均通りの投票率だった。




事前投票の時点で誰が有利なのかは不透明

今回の事前投票の結果が誰に向かっており、高い事前投票率が誰にとって有利かという点については、韓国各紙ともに、いまいち確信に欠ける。

「弾劾に参加した国民が大多数であった点と、政権交代に対する声が高かったため、共に民主党と国民の党に有利にはたらく。特に積極的な支持層が多い文在寅(ムン・ジェイン、64)候補に票が偏っている可能性がある」(東亜日報)

「通常、事前投票を若者層が多く行う点を考慮する場合、文在寅候補に有利にはたらく」(ニュース1、政治評論家、ファン・テスン氏)

安哲秀写真
投票日までの5日間、「120時間、歩いて国民の中に」キャンペーンを行い、全国行脚中の安哲秀候補。リュック姿のラフな格好で歩き、市民と交流する。陣営は勝利を確信している。同氏選対本部フェイスブックより引用。

「湖南地域での投票率の高さから文在寅、安哲秀(アン・チョルス、55)両候補に有利。大邱市の低調な投票率は若者が選挙に行かなかったことを示しており、洪準杓(ホン・ジュンピョ、62)候補にとって大変悪い兆候」(ニュース1、申律シン・ユル、明知大学教授)

「野党の支持者はもともと積極的な支持層。正しい政党の劉承旼(ユ・スンミン、59)候補と正義党の沈相奵(シム・サンジョン、58)候補に若者層が『所信投票(編注:結果にこだわらず好みの候補に投票すること)』を行った可能性もある」(朝鮮日報、パク・ミョンホ東国大教授)

結論は出しかねる、と見た方がよさそうだ。事前投票率の高さはあくまで「選挙への関心の高さ」と置き換えるにとどめておくべきだろう。

当落予想は世代別の投票率がカギ

このように、選挙結果は蓋を開けてみないと分からない。だが5人の有力候補に票が分散している状況では、「各世代の投票率」が当落にもっとも影響を与えるという見方が強い。

地域別の偏りは湖南地域で文候補、安候補に票が割れたことで以前ほどではなくっている。特に「TK」と呼ばれる保守候補が圧倒的な強さを誇った大邱市と慶尚北道では文、洪、安候補の三つどもえとなっている。

また、これまでの各紙世論調査を見ると、19~49歳までの年代では文在寅候補が過半数前後という圧倒的な支持を受けている。

50代は文候補がやや有利も、やはり洪、安候補と3つどもえと見てよい。一方、60代以上では洪準杓候補は40%前後の支持でトップに立っている。

世代別有権者分布表
世代別の有権者分布。若者層は年々減少している。中央選管の韓国語データを本紙が日本語に置き換えた。

19歳~49歳までの有権者人口は全体の55.7%に上るため、この層が多く投票することで、文候補は有利になる。

文候補にとって特に大切なのが、20代と30代の投票率だ。前回2012年の大統領選のように、20代が68.5%、30代が70.0%と、60代以上の80.9%に大幅に劣るようだと、洪準杓候補が有利となる。

とはいえ、5月4日の中央選管の調査で「投票する候補を決めていない」と答えた有権者は29.2%にのぼった。

筆者も含め、いまだに投票先を決めかねている有権者はソワソワし始めているはずである。投票日は3日後に迫っている。