本紙の写真特集でもお伝えした通り、11月12日、ソウル都心を100万人を超える市民が埋め尽くした。だが、この史上最大のデモを受けた政局の動きは当初の予想よりも低調で、市民の不満が高まっている。緊張感がピンと張り詰めた「デモ明け」の情勢を整理する。(ソウル=徐台教)

「これ以上ない奇跡的なデモ」

この日、光化門広場から市庁前広場、明洞、南大門、鐘路、清渓川にかけて、ろうそくの灯は途切れることなくつながり、市民は怒りを平和な雰囲気に置き換え、朴槿恵大統領に「NO」を突き付けた。

警察発表26万人、主催者発表100万人という隔たりには疑問の声が上がったが、ソウル市の都市交通本部が13日に発表した資料によると、この日、地下鉄の利用客が昨年11月の平均より50万人以上増加した。市民の移動において地下鉄が占める割合が39%であることを考えると、この日、100万人が参加したことは間違いないという。

この日、ソウル都心には、主催者発表100万人、警察発表26万人の市民がつめかけた。
この日、ソウル都心には、主催者発表100万人、警察発表26万人の市民がつめかけた。

筆者もデモを最初から最後まで現場で見届けたが、人数よりも重要なものがそこにあった。老若男女を問わない多様な参加者、そしてその明るくも真剣な表情、コールに合わせて上がる声は地鳴りそのものだった。直線距離でわずか3キロ程度しか離れていない大統領官邸・青瓦台まで声が届いたことだろう。

午後7時から8時にかけてのピーク時には、光化門広場は一歩も動けないほどで、人いきれにむせ返りもした。それにも関わらず、大きな事故もなく、また懸念された警察との先鋭的な衝突もなかった。掃除までキッチリと行い解散したこの日のデモを、SNS上で広く共有されているように「奇跡的に行われた」ものと評しても過言ではないだろう。

市民もデモに満足

デモに参加した市民の声も紹介する。ソウルから参加した35歳の男性は「今回のデモは成功」だと静かな口調で評価した。「大統領はすぐに下野しなければならないが、受け入れない場合は弾劾決議案が必要だ」とした。今後もデモに参加するのかとの問いには「そうだ」と短く答えた。

また、大田広域市から参加したというピョ・ジュヨン氏をはじめとする30代の女性3人は、「デモの参加は初めてだったが、社会を変えるためのお祭りのようで、とてもいい印象だ」と感想を語った。「周囲にもこの問題に関心を持って朴槿恵大統領を批判する声は高い。ただ、デモに参加するという人は多くなかった」としつつ、「大統領が下野しない場合には今後もデモに参加していく」と明るい表情で友人と意思を確認し合う姿が印象的だった。

全羅南道光州(クァンジュ)から来た人物を含む60代男性たち。87年6月の民主化闘争にも参加したという。
全羅南道光州(クァンジュ)から来た人物を含む60代男性たち。87年6月の民主化闘争にも参加したという。

市民運動の「ベテラン」たちからは骨太の指摘が上がった。1980年の「5.18光州民主化運動」で有名な全羅南道の光州から来た人物を含む60代の男性3人組は、「今日のデモは大成功」と自負心に満ちた表情で語った。3人は、大統領直接選挙制を勝ち取った87年6月の「6月抗争」にも参加したという。ただ「朴大統領が国民の声を受け入れるかは未知数」と慎重な態度を崩さなかった。そして「これだけはぜひ書いてくれ」と言って、文在寅(ムン・ジェイン)元民主党代表の煮え切らない態度を「漁夫の利を得ようとするのは卑怯だ」と批判した。3人は2012年の選挙でいずれも文氏に投票したとのことだ。

続いて「今回のデモは、大統領の下野で終わる話ではない。1945年の『解放』以降、放置し、蓄積してきた社会問題を解決するまで続く『第二の建国』にしなければならない」と主張した。こうした意見は、デモ参加者のうち、少なくない人々に共有されているように思える。デモに参加した労組や学生たちはいずれも「社会の格差是正」という根本的な問題を訴えていたからだ。




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