野党による弾劾も期待薄

ただ、朴槿恵大統領が「被疑者」であることが様々な証拠から明らかになった場合、世論をはじめ、野党も黙っていられない。検察によって色濃い疑惑の証拠が国民のあいだに広く共有される場合はなおさらだ。前述したように、それでも朴大統領が「大統領特権」を盾に粘る場合、野党は憲法第65条にのっとり「弾劾」手続きを取るものとみられる。

弾劾は国会議員300人のうち過半数で発議され(151人)、200人以上の賛成で可決される。現在、野党全体の議員数は171人であるため、与党・セヌリ党議員の129人のうち、29人の議員が離脱する必要がある。現在、内紛状態にあるセヌリ党では「非常時局会議」に反朴槿恵派議員44人が参加し、党指導部の辞任や朴大統領の出党を求めているため、十分に考えられる数字だ。

与党・セヌリ党の「非常時局会議」で発言する座長格の金武星(キム・ムソン)元セヌリ党代表。反朴槿恵派の筆頭だ。写真は金武星氏のyoutubeよりキャプチャ。
与党・セヌリ党の「非常時局会議」で発言する座長格の金武星(キム・ムソン)元セヌリ党代表。反朴槿恵派の筆頭だ。写真は金武星氏のyoutubeよりキャプチャ。

国会での可決後、憲法裁判所で最終的な決定が下される。裁判官9人のうち6人の同意で成立する。憲法裁場所は国会が弾劾訴追を議決したあと、180日以内に決定を下す必要がある。しかし、「国民日報」などの韓国メディアが詳細を報じている通り、現在の9人の裁判官のうち、朴漢徹(パク・ハンチョル)憲法裁判所長は1月末に、もう一名は3月中旬に退任が決まっている。後任は国会などの推薦を受け、朴大統領が任命をすることになるが、現状では空席になる可能性が高いという見通しだ。

欠員の2人は「反対」扱いとなるため、残る7人のうち6人の賛成が必要となる。だが、このハードルは極めて高いという指摘が法曹界や市民から上がっている。現在の憲法裁判所の裁判官は、李明博・朴槿恵という同じ保守政権下で任命されたことがその理由だ。たった2人が反対するだけで否決となる事実は、「弾劾」が成功する可能性が低いことを如実に示している。

早期大統領選挙を可能にするのは「市民」

これまで見てきたように「正当な手続き」では、朴槿恵大統領が退陣する可能性はほとんど無い。このため、「早期大統領選挙」もまた無いということになるが、イリーガルが存在する。

それが「即時退陣」、もしくは野党政治家が主張する、朴大統領が国政の一線を退き野党推薦の責任総理が次の選挙までを管理する、「過渡内閣制論」だ。

「即時退陣」の場合には憲法第68条2項により、大統領が辞任した日から60日以内に大統領選挙を実施することになる。一方、「過渡内閣制論」の場合は、日程の調整が行われる。現在、もっとも有力な日程は、来年4月12日に行われることが決定している補欠選挙と同日に実施するという案だ。

ただ、繰り返すように、このシナリオは現状では絵空事に過ぎない。だからこそ、市民は路上に出ているという構図がある。法的にはまったく保障されない、超法規的な大統領の退陣を目指して、100万人が集まっているのである。世論調査機関「R&Search」が11月8日に発表した調査結果によると、市民の62.2%が大統領の下野(辞任)と「早期大統領選挙」を望んでいる。

19日のデモ予想図。全国で同時多発的に行い、前回の100万人超えを目指す。12日の大規模ろうそくデモの主導的な役割を果たした、1500余の市民団体で構成される「朴槿恵政権退陣・非常国民行動(略称:退陣行動)」が作成した。
19日のデモ予想図。全国で同時多発的に行い、前回の100万人超えを目指す。12日の大規模ろうそくデモの主導的な役割を果たした、1500余の市民団体で構成される「朴槿恵政権退陣・非常国民行動(略称:退陣行動)」が作成した。

野党ももはや、頼るところは国民しかない。市民がデモを通じ、いかに効果的に、世論を青瓦台と朴槿恵大統領に伝えられるのか。「朴槿恵・崔順実ゲート」は、野党を飛び越して、市民と大統領の「直接決戦」の様相を呈してきたといっても過言ではないだろう。

そして市民の「勝利」には、メディアと検察がいかに公正かつ透明な情報を国民に伝えるかにかかっている。市民はそれによって義憤を覚え、自分の生活と大統領をつなぐことができる。まぎれもなく、今の韓国政治の「主役」は市民である。19日はワンクッション置くにしても、26日に最大の参加者を達成できれば、新しい地平が見えてくる。韓国の人々はそれを可能にするだろうと筆者はみる。