当初、明日2日にも国会で議決されるはずだった朴槿恵大統領の弾劾案が漂流している。先月29日の朴大統領の国民向け談話によるものだ。政界では「職務停止」から一転、「秩序ある撤退」の声が大きくなった。市民の怒りが行き場を失ったとの指摘もあるなか、デモを主催してきた市民団体は戦い抜くかまえだ。(ソウル=徐台教)

ようやくたどりついた「弾劾」だが

崔順実(チェ・スンシル)氏が使用していたタブレットPCから、崔氏が国家機密を事前に共有し指図していたことが明らかになったのは10月24日のことだった。翌25日には朴槿恵大統領本人が「補佐陣が整うまで崔順実氏に助言を頼んだもの」と弁明する一度目の「国民向け談話」を発表し、「秘線(非公式の実力者)」の存在を事実上みとめた。

だが、朴大統領の弁明は嘘であった。検察の捜査とメディアの報道により、財閥、スポーツ、防衛産業にいたるまで、果てしない「朴槿恵・崔順実ゲート」が現在進行形で行われていることが明らかになったからだ。市民は自らの生活がいかに一部の人間の手に左右されてきたのかに憤り、朴大統領の支持率は4%(11月24日)にまで落ち込んだ。

市民は同時に「平和ろうそくデモ」という形で怒りを表明しはじめた。10月29日から先週11月26日まで5週にわたり、土曜日ごとの参加者は5万人(29日)、20万人(11月5日)、100万人(12日)、96万人(19日)、そして、190万人(26日)にいたるまでふくれあがった。(全国の延べ数値、いずれも主催者発表)

11月12日のデモ。100万人を集め、「これで変わる!」と確信した市民も多かったはずだ。
11月12日のデモ。100万人を集め、「これで変わる!」と確信した市民も多かったはずだ。

その熱気は党利党略、私利私欲にからめとられた政治家に圧力を加え、時に勇気づけた。政治家もやがて市民の声を「風向き」ととらえるようになった。そしてそれは12月2日の「朴槿恵大統領の弾劾議決=職務停止」となって、実を結ぶ予定だった。

だが、それが崩れ落ちようとしている。11月29日の朴大統領による三度目の談話にあった「任期短縮をふくめ進退問題を国会に預ける」という一文のためだ。

本紙でも29日にお伝えした通り、当初の反応は単純なものだった。「ただの時間稼ぎのインチキだ」という声が市民はもちろん、野党側にも圧倒的で、このまま弾劾へと進むものと見られた。筆者も同様だった。だが、その見通しが甘かったことが、わずか1日で明らかになった。




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